閲覧ガイド(工事費用の目安)


補修費用の目安

1.補修費用の目安の活用方法

ここでは「補修費用の目安」を活用し、概算工事費を積算する手順の一例を示します。
[「補修費用の目安」を活用して概算工事費を積算する手順]
  • 参考とする「補修費用の目安」を選定
    実施する補修工事と類似した工事内容に対応した「補修費用の目安」を選定します。
  • 時点補正
    「補修費用の目安」(2000年時点)と概算工事費を積算する時点との差異を「表1 建設費指数を用いた時点補正」を用いて補正することができます。
  • 地域補正
    「補修費用の目安」は、東京都(区部)において実施される補修工事を想定して積算していますが、その他の地域では、「表2 都市別指数を用いた地域補正」を用いることによって、地域補正をすることができます。
  • その他、工事費用に影響を及ぼす事項
    上記の時点修正および地域補正の他、「補修費用の目安」の補修工事内容と、概算の補修工事費用を求める補修工事に、建物の規模・形態、地盤条件、構造、工事の難易度等、条件の違いがある場合、補修工事費用に影響を及ぼすことがあるので注意が必要です。
  • 補修工事の概算額の積算
    以上より補修工事の概算工事費を積算することができます。

2.補修費用の目安の活用上の留意点

「補修費用の目安」に提示されている補修工事費は、参考とする金額であることに、注意する必要があります。
住宅紛争処理技術関連資料集で示している工事費用編を活用して、補修工事費を算定する際、影響のある主な要因を次頁以降の「2.1 時点による補正」「2.2 立地要因による補正」「2.3 個別の建物要因」に示します。

2.1
時点による補正
補修工事費用の形成要因は、時の経過により変動するものであるため、補修工事費用はその算定の基準となった時点においてのみ妥当するものです。したがって、補修工事費の算定を行うに当っては、「補修費用の目安」から類似の補修工事を選定後、算定を行う時点の工事費に修正する必要があります。
ここで、「建築費指数」を用いて積算を行う時点の補修工事費に補正する方法を示します。


表1-1 集合住宅 RC造 (2000年=100)
工事原価 純工事費 建築 設備
建築 仮設 土工/地業 躯体 仕上 設備 電気 衛生 空調
2018年 109.2 109.5 110.7 106.4 108.0 145.0 92.2 104.9 112.7 103.5 101.3
2019年 110.9 111.2 112.5 106.9 108.7 146.4 94.6 106.6 114.1 105.1 102.3
2020年 111.7 112.0 113.1 107.0 108.3 142.7 98.2 108.0 114.7 107.3 103.2
2021年 114.8 115.2 116.7 107.2 110.0 150.9 99.9 109.7 118.3 108.4 103.0
2022年 123.9 124.5 127.5 108.4 116.2 168.9 109.3 113.7 122.1 114.1 104.0
(参考:(一財)建設物価調査会ホームページ)

                                          
表1-2 住宅 木造  (2000年=100)
工事原価 純工事費 建築 設備
建築 基礎 木工 屋根 金属製建具 内外装 設備 電気 衛生
2018年 95.3 94.8 92.9 133.2 85.7 96.4 90.8 83.5 105.2 108.2 102.4
2019年 97.7 97.3 95.6 134.7 88.3 97.5 90.8 90.3 106.5 109.3 103.8
2020年 100.5 100.4 98.9 133.2 92.9 106.6 90.8 94.0 108.2 109.9 106.3
2021年 104.6 104.8 103.7 136.5 102.9 108.3 90.8 94.7 109.7 112.6 107.5
2022年 118.2 119.7 120.0 146.8 134.3 111.0 95.3 98.6 114.1 115.5 114.0
(参考:(一財)建設物価調査会ホームページ)

                                         
表1-3 集合住宅 S造 (2000年=100)
工事原価 純工事費 建築 設備
建築 仮設 土工/地業 躯体 仕上 設備 電気 衛生
2018年 112.3 112.9 114.9 105.7 110.9 165.2 92.5 105.1 113.3 103.4
2019年 114.6 115.2 117.5 106.3 111.4 168.8 95.0 106.6 114.8 104.8
2020年 115.5 116.1 118.2 106.3 110.9 161.7 98.8 108.1 115.4 107.1
2021年 119.7 120.4 123.2 106.6 112.4 176.3 101.0 110.0 119.5 108.1
2022年 130.6 131.6 136.3 107.9 117.5 202.4 111.2 114.1 123.8 113.4
(参考:(一財)建設物価調査会ホームページ)
2.2
立地要因による補正(地域補正)
補修工事費用は地域によって異なるため、補修工事費の算定を行うに当っては、算定を行う地域の工事費に修正する必要があります。
ここでは、「都市間格差指数」を用いて積算を行う地域の補修工事費に補正する方法を示します。東京を100とした場合の各地域の工事原価水準は、以下のとおりとなっています。

表2:都市間格差指数を用いた地域補正(東京都を基準指数100とした)
                                        
表2-1 集合住宅 RC造 (東京都=100)
工事原価(2021年)
東京都 大阪市 名古屋市 福岡市 広島市 高松市 金沢市 新潟市 仙台市 札幌市
100.0 99.6 94.9 95.9 96.9 96.5 96.4 95.5 98.1 99.6
(出典:(一財)建設物価調査会ホームページ)

                                             
表2-2 住宅 木造 (東京都=100)
工事原価(2021年)
東京都 大阪市 名古屋市 福岡市 広島市 高松市 金沢市 新潟市 仙台市 札幌市
100.0 98.3 96.3 96.2 97.7 96.2 96.7 96.0 98.0 97.9
(出典:(一財)建設物価調査会ホームページ)

                                       
表2-3  構造別平均 S造 (東京都=100)
工事原価(2021年)
東京都 大阪市 名古屋市 福岡市 広島市 高松市 金沢市 新潟市 仙台市 札幌市
100.0 98.8 95.9 96.3 96.8 96.6 96.3 95.7 98.2 100.2
(出典:(一財)建設物価調査会ホームページ)
2.3
住宅の個別建物要因
補修工事費用は、対象となる住宅の個別的要因を反映するものです。ここでは、個別的要因として考慮すべきと考えられるものを示しています。

2.3.1
構造別要因
住宅の構造(木造・鉄筋コンクリート造・鉄骨造等)により補修費用が異なります。
2.3.2
規模・形状・品質要因
補修工事の内容が同一であれば、規模が大きな建物は、スケールメリットから工事単価が低くなる傾向にあります。
また、同じ補修工事内容であっても、建物の形状や品質(仕様、程度等)の水準によって工事単価は変動します。
2.3.3
敷地条件による補正
補修費用は、その建設場所の敷地条件の違いによって大きな差が生じる場合があります。
建物が密集した地域では材料搬入の効率の低下、近隣建物への養生、近隣対策、工事中の危険防止対策などの費用が必要となり、一般に建物が密集していない地域の工事に比べて、仮設・諸経費等が割高になります。
2.3.4
地盤条件等による補正
地盤の良否は、杭・基礎補修工事の内容に大きな影響を及ぼし、採用する工法によって費用は大きく変動します。
また、地下水位が高い場合は、排水・山止め・掘削などの土工事の費用が増し、地下室の防水、防湿工事等の費用が必要となります。
2.4
「建築費指数」の活用とその留意点
「建築費指数」は、基準時や基準地を100として、それぞれの時期や地域による補修費用の変動を表しています。「建築費指数」を用いることによって、過去の建築費を時点修正し、都市地域間の格差を推測する事ができます。

2.4.1
工事費用編に用いる指数
工事費用編に用いる指数は、「建設物価建築費指数」を採用しています。この理由は、以下のとおりです。
(1)
時系列及び地域別の両方の指数に対応しており、データの一貫性が保つことができる。
(2)
必要に応じて工事費を構成する科目(仮設・土工地業等)や種目(工事原価・純工事費等)の指数を得ることができる。
2.4.2
留意点
建築費指数を活用する際には、下記の点について十分に留意する必要があります。
(1)
「建築費指数」には施工条件、仕様等の個別変動要素は反映されていないため、指数による補正とあわせて個別要因を把握し、十分注意する必要があります。
(2)
「建築費指数」は一般的な新築工事が対象です。補修工事費は労務費や間接工事費部分の比率が新築工事費に比べて高くなる傾向にあること等に注意する必要があります。