１．建具の開閉不良とは

２．発生原因

（１）

適切な設計・施工でも通常起こり得る軽微な開閉不良
適切な設計・施工が行われていても、使用しているうちに建具金物等がゆるみ、建付けに軽微なくるいが生じたり、木製建具において乾燥や建具両側の室の温湿度の違いにより軽度なそりが生じて建具の開閉不良が起こり得る。この場合は、建具の調整をすることにより不具合は解消する。

（２）

床・壁・天井の変形
外壁（内壁）の傾斜、床の傾斜やたわみ、天井のたわみ等に伴って、建具枠が変形し建具の開閉不良が発生することがある。

（３）

不適切な建具枠、建具の設計
建具枠、建具の設計段階において、以下の事項に不適切な点がある場合には、建具の開閉不良につながることがある。

①

建具枠の材料の選択

②

建具枠、建具の仕様の選択

③

建具枠の取付補強（間柱の間隔、窓台・まぐさの断面等）

（４）

不適切な建具枠，建具の施工等
建具枠、建具の施工段階において、以下の事項に不適切な点がある場合には、建具の開閉不良につながることがある。
（材料）

①

建具枠の材料の選択

②

建具枠、建具の仕様の選択

（施工）

③

建具枠の取付補強（間柱の間隔、窓台・まぐさの断面等）

④

建具の取付位置及び取付方法

• 建具の開閉不良が建具枠の変形に起因しているかを確認する。

１．建具枠の水平・垂直度の確認

（１）調査方法

①

竪枠の垂直度の確認

• 下げ振り等を竪枠上端から下枠まで垂らし、垂直度を目視及び測定にて確認する。

②

下枠の水平度と変形の確認

• 下枠・敷居等に勾配計をあて、水平度を目視及び測定にて確認するとともに、下枠・敷居等の変形を目視にて確認する。

③

上枠の水平度の確認

• 上枠、鴨居等の両端角に水糸等を水平に張り、水平度を目視及び測定にて確認する。

④

枠の構成面のねじれの確認

• 枠の構成面で対角線に水糸を張って、中央部で両水糸のはなれ具合を測定する。

（２）注意事項等

• 建具の開閉を数回行い、どの部分に不具合事象が生じているかを目視等により予め確認しておく。

• 建具枠の水平・垂直度にくるいが生じている場合は、建具枠の変形に起因する建具の開閉不良の可能性が高い。
• 建具枠の水平・垂直度にくるいが生じていない場合は、建具そのものの変形や、取付け金物の不良等に起因する建具の開閉不良の可能性が高い。

• 下げ振り（垂球）　下げ振り（ダイヤル表示・デジタル表示）
• レーザーレベルまたはレーザープレーナー
• 勾配計
• 水糸
• スケール

• 建具枠の変形が確認された場合は、それが床・壁・天井の変形に起因しているかを確認する。

１．床・壁・天井の変形の確認

（１）調査方法

①

外壁（内壁）の傾斜の確認

• 竪枠の変形が確認された場合は、建具枠が設けられている外壁（内壁）の傾斜の程度を下げ振り等を用いて測定する。
  ＜詳細は[外壁の傾斜－1　 木造（軸組）、 木造（枠組）、 RC造、 S造]、 [内壁の傾斜－1　 木造（軸組）、 木造（枠組）、 RC造、 S造]をそれぞれ参照のこと＞

②

床の傾斜・たわみの確認

• 下枠の変形が確認された場合は、建具枠が設けられている周辺の床の傾斜・たわみの程度を勾配計等を用いて下枠に沿って測定する。
  ＜詳細は[床の傾斜－1　 木造（軸組）、 木造（枠組）、 RC造、 S造]、 [床のたわみ－1]　 木造（軸組）、 木造（枠組）、 RC造、 S造をそれぞれ参照のこと＞

③

天井のたわみの確認

• 上枠の変形が確認された場合は、建具枠が設けられている周辺の天井のたわみの程度を伸縮スケール等を用いて、上枠に沿って測定する。
  ＜詳細は[天井のたわみ－1　 木造（軸組）、 木造（枠組）、 RC造、 S造]を参照のこと＞

（２）注意事項等

• それぞれの調査の注意事項等については[外壁の傾斜－1　 木造（軸組）、 木造（枠組）、 RC造、 S造]、 [内壁の傾斜－1　 木造（軸組）、 木造（枠組）、 RC造、 S造]、 [床の傾斜－1　 木造（軸組）、 木造（枠組）、 RC造、 S造]、 [床のたわみ－1　 木造（軸組）、 木造（枠組）、 RC造、 S造]、 [天井のたわみ－1　 木造（軸組）、 木造（枠組）、 RC造、 S造]を参照のこと。
• 上記の調査を行う際には、周辺の内装仕上材にも、はがれ、浮き、ひび割れ等の不具合事象が発生していないか併せて調査する。

• 外壁（内壁）に傾斜が発生している場合は、それが原因で建具枠の変形が生じている可能性が高い。
• 床に傾斜が発生している場合、又はたわみが発生している場合は、それが原因で建具枠の変形が生じている可能性が高い。
• 天井のたわみ量が大きく、建具枠上部の梁がたわんでいる場合は、それが原因で建具枠の変形が生じている可能性が高い。
• 外壁（内壁）・床・天井のいずれにも、傾斜・たわみが発生していないか、あるいはわずかな傾斜，たわみが発生している場合は、建具枠そのものが変形している可能性が高い。

• [外壁の傾斜－1　 木造（軸組）、 木造（枠組）、 RC造、 S造]、
  [内壁の傾斜－1　 木造（軸組）、 木造（枠組）、 RC造、 S造]、
  [床の傾斜－1　 木造（軸組）、 木造（枠組）、 RC造、 S造]、
  [床のたわみ－1　 木造（軸組）、 木造（枠組）、 RC造、 S造]、
  [天井のたわみ－1　 木造（軸組）、 木造（枠組）、 RC造、 S造]のそれぞれを参照のこと。

• 建具枠の変形が確認されない場合は、開閉不良が建具そのものに起因している可能性が高いため、建具の変形を確認する。

１．建具の変形の確認

（１）調査方法

• 開き戸等の場合は、たてつけたままで建具の２つの対角線状に水糸（又はスケール）を当て、その長さを測定し比較する。また、対角線状に水糸を張り、建具中央部のそりの有無を確認する。
• 引違い戸、引き戸等の場合は、建具の障子相互、建具の障子と戸袋が擦れている箇所がないかを目視等にて確認する。次に、建具をはずして上記の開き戸と同じ方法でそりの有無等を確認する。

（２）注意事項等

• 特になし

• 建具の変形が確認された場合は、建具そのものの変形が原因で建具の開閉不良が生じている可能性が高い。

• スケール
• 水糸

• 建具枠及び建具の設計が適切に行われているかを確認する。

１．建具枠，建具の設計内容の確認

①

建具枠の材料の選択

②

建具枠、建具の仕様の選択

③

建具枠の取付け補強（間柱の間隔、窓台・まぐさの断面等）

（１）調査方法

• 当該住宅の設計図書（設計図、仕様書等）を対象として、上記＜確認ポイント＞に沿って建具枠及び建具の取付け、仕様等が適切であるかを確認する。なお、適切であるかの検討にあたっては、建設住宅性能評価関連図書等、国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「公共建築工事標準仕様書」「建築工事監理指針（下巻）」、その他の仕様書、基準等が参考となる。

（２）注意事項等

• 特になし

• ｢公共建築工事標準仕様書（建築工事編）令和４年版｣（国土交通省大臣官房官庁営繕部監修、（一社）公共建築協会発行）

• ｢建築工事監理指針　令和４年版（下巻）｣（国土交通省大臣官房官庁営繕部監修、（一社）公共建築協会発行）

• ①建具枠の材料の選択
  強度の必要な木製枠の開き戸の吊元等に不適切な材料を選択している場合などは、建具枠の強度不足等により建具枠の変形を誘発し、建具の開閉不良が生じている可能性が高い。
  （アルミサッシや既製品の枠付建具は、上記原因によることは少ない。）
  
  
  窓、出入口の樹種：製材を用いる場合は、吊元枠、水掛りの下枠及び敷居はひのき、
  　　　　　　　　　その他は松又は杉とする。（引用１）
• ②建具枠、建具の仕様の選択
  木製建具の見込寸法が不足している場合や建具両面の仕上材が異なる場合等は、建具の仕様の選択不良により建具の変形（そり等）を誘発し、建具の開閉不良が生じている可能性が高い。
• ③建具枠の取付け補強
  建具の重量に対して、たて枠を取付けている間柱や、窓台・まぐさ等の断面寸法が不足している場合等は、建具枠の取付け補強が適切でないために建具枠の変形を誘発し、建具の開閉不良が生じている可能性が高い。（参考４）
• また、建具の形式、大きさ、重量等に見合った建具金物（丁番等）が選択されていない場合等は、取付け部の耐力不足等により建具の開閉不良が生じている可能性が高い。

• ｢公共建築工事標準仕様書（建築工事編）令和４年版｣ p192(12.5.1)（国土交通省大臣官房官庁営繕部監修、（一社）公共建築協会発行）

• 「建築知識1994年8月号」p80、p100（(株)建築知識編集、発行）

• 「木造住宅工事仕様書　2023年版」p249施工方法(2)（住宅金融支援機構編著、(株)井上書院発行）

• 特になし

• 「建具の開閉不良」が、建具枠及び建具に起因する可能性が高いことを前提とし、建具枠及び建具の施工が適切に行われているかを確認する。

• 特になし