補修方法編

基礎のひび割れ・欠損 樹脂注入工法 K-2-501
木軸・木枠
工事概要

ひび割れ部や浮き部分に樹脂(エポキシ樹脂)を注入し、耐力の向上と止水性を確保する工法である。


概念図(引用:参考文献4)
対応する不具合と原因 不具合
  • 基礎のひび割れ、欠損(K-2)
原因
  • 基礎の断面寸法・配筋方法等の不良
  • 基礎の配置・間隔不良
  • 基礎の補強筋の不良
  • 床下換気口等、開口部補強等の不良
  • 施工方法の選択不良
  • コンクリートの打込み・締固め不良、養生不良
  • 仕上材の施工不良
適用条件
  • ひび割れの原因が、構造耐力上の問題によらない場合に適用する。
  • ひび割れの原因が、構造耐力上の問題による場合は、補修工事の実施によりその問題が取り除かれていることが専門家の調査により確認された場合に限り適用する。
  • ひび割れの幅が1.0㎜程度以下で、挙動(進行)しない場合に適用可能な方法である。(参考:参考文献2)
  • 雨水の浸入を防ぐと同時にコンクリートのひび割れ発生以前の状態に回復させ、耐久性効果を期待する場合に適している。(参考:参考文献2)
  • 補修により、美観上の問題が生じないことが確認された場合に限り適用する。
工事手順の例
1.事前調査
現場調査により適用条件を満たしていることを確認する。
ひび割れの状況を確認し、工事計画を立てる。
ひび割れの状況に応じて注入エポキシ樹脂(JIS A6024)の性状(低粘度形・中粘度形)、シール材の選定を行う。(※1)
2.仕上材等の撤去
施工する基礎回りの地盤を10~15cm(基礎底盤まで)程度掘り下げる。
必要な場合は、施工範囲をシート等で養生する。
外装仕上材を撤去し、コンクリート表面を露出させる。
3.注入口の位置決定(参考:参考文献1)
注入口の位置を規定の間隔に測定し、チョーク等でマーキングする。(参考:参考文献1)
注入パイプをひび割れの上に200~300mm間隔に取り付ける。(参考:参考文献1)
4.シール材の塗布・養生(参考:参考文献1)
ひび割れ部に仮止めシール材(パテ状エポキシ樹脂等)を塗布してひび割れ部をシールする。(幅30㎜、厚さ2㎜程度)(参考:参考文献1)
シール材の硬化養生を行う。
5.樹脂の注入
注入口よりひび割れ部に注入材料を注入する。
注入したエポキシ樹脂の硬化後、台座や注入器具、仮止めシール材を除去し仕上げを行う。
6.養生
注入した樹脂の硬化養生を行う。
7.仕上材等の復旧
撤去した仕上げ材等の復旧を行う。
8.最終確認
工事の仕上り、止水状況を確認する。
養生シート等を撤去し、後片付け、清掃を行う。
備考
  • 注入方法には、自動式、手動式、機械式がある。ひび割れの発生原因を推定し、ひび割れの種類及び改修の目的に応じて使い分ける。(参考:参考文献2)
  • ひび割れ部分が挙動(進行)する場合は、軟質形注入エポキシ樹脂を使用するか、又はUカットシール材充填工法(木造(共通)・S造K-2-601)を採用する。(参考:参考文献2)
  • 近年、大きなひび割れから微細なひび割れにまで完全注入が可能で注入量の管理がしやすい自動式低圧低速注入工法が多用されている。
(※1)貫通したひび割れに注入する場合は、裏面を仮止めシール材でシールすることが原則であるが、擁壁や地下ピット等で裏面のシールができない場合は、樹脂の粘度を低粘度形・中粘度形の順に変更して追加注入し、場合によっては高粘度形を追加注入し、ひび割れの中に樹脂が十分充填されるようにする。(引用:参考文献2)なお、樹脂の粘度を変更しても十分な対策がとれない場合、又は粘度が高いため鉄筋があるひび割れの奥まで注入できない場合は、RC造W-1-325樹脂注入止水工法を含めて検討を行う。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和4年版
[p83~84(4.2.5)](国土交通省大臣官房官庁営繕部)
(一財)建築保全センター (一財)建築保全センター
2 建築改修工事監理指針 令和4年版(上巻)[p350~351(図4.1.5),p369~376(4.2.4),p383~386(4.2.5)](国土交通省大臣官房官庁営繕部) (一財)建築保全センター (一財)建築保全センター
3 打ち放しコンクリート外壁の補修・改修技術[p109~112](建設大臣官房技術調査室) 外装仕上げおよび防水の補修・改修技術出版企画編集委員会
(財)日本建築センター
(財)建築保全センター
(財)日本建築センター
(財)建築保全センター
4 建築改修実務事典[p324~336] 建築改修実務事典編集委員会編集 (株)産業調査会事典出版センター
5 コンクリートのひびわれ調査、補修・補強指針(2022)[p123~125] (公社)日本コンクリート工学会 (公社)日本コンクリート工学会