補修方法編

外壁の傾斜 壁の打直し補修(耐力壁等) G-1-304
RC造
工事概要

既存の耐力壁等を撤去し、打ち直して、適正な強度、剛性に高める。


概念図(chord作成)
対応する不具合と原因 不具合
  • 外壁の傾斜(G-1)
  • 外壁のひび割れ・欠損(G-2)
  • 内壁の傾斜(N-1)
  • 水平振動(V-2)
原因
  • 柱・大梁・小梁・壁の配筋方法の不良(配筋位置のずれ等)
  • コンクリートの打込み・締固めの不良、養生の不良
  • 工事中の一時的な過荷重の積載
適用条件
  • 補修工事に伴う荷重の変動を考慮した長期荷重によって既存の全ての架構に生ずる力が長期許容応力度内に収まっており、原則として躯体コンクリートに不良箇所がない場合に適用が可能である。
  • 工事期間中の既存の耐力壁等を撤去した状態においては、長期・短期荷重によって架構に生ずる力が長期・短期許容応力度内に収まっていること。(※1)
  • 内壁においても適用可能な工法である。
工事手順の例
1.事前調査
現場調査、構造計算等により適用条件を満たしていることを確認する。
2.既存耐力壁等及び仕上材の撤去
必要に応じて足場を設置し、養生を行う。
撤去対象の耐力壁回りで、工事の影響を受ける範囲の内装仕上材(床、壁、天井)を撤去した上で耐力壁を取り壊す。新設壁の定着用として鉄筋を残し、鉄筋に問題がないことを確認する。
残りの内装部分に対する養生を行う。
3.準備
躯体の実測と墨出しを行う。
躯体(梁の上下、柱の接合面)の目荒らしを行う。
4.鉄筋加工・組立
必要に応じて、壁縦筋、横筋を組立て、新設する壁筋をフレア溶接継手又は重ね継手により既存鉄筋に接合する。(参考:参考文献1)
5.型枠の加工・組立
上部に打込み投入口を残して型枠を組み立てる。
6.コンクリートの打込み・締固め
打込み面を清掃、水湿しした上で、コンクリートを打込む(又は下部より圧入)。コンクリートの打込みは梁下200mm程度のところでいったん打ち止める。(参考:参考文献1)
7.グラウト材の圧入・養生
コンクリートの打込み1~2日後、打込みしたコンクリート壁と梁の200mm程度の隙間にグラウト材を圧入する。(参考:参考文献1)
コンクリートの打込みののち、強度を確認、または所定の存置期間を確保したうえで型枠を撤去する。
  • 注入されたグラウト材の養生時の温度および養生期間は、グラウト材製造メーカーの仕様に基づくものとし、この養生期間(5~7日間程度)は原則として型枠を残すことが望ましい。(参考:参考文献1)
8.内外装仕上材等の復旧
撤去した内外装仕上材(床、壁、断熱壁、天井、外壁仕上材)を復旧する。
9.最終確認
工事全体の仕上りを確認する。
足場、養生等を撤去の上、片付け、清掃を行う。
備考
  • 本補修における「耐力壁等」とは、耐力壁以外にそで壁、腰壁、下り壁等の構造計画上で考慮している壁も含む。
  • 本施工に伴い、住戸スラブ回りの電気、給排水設備の切断、再接続工事が発生する場合がある。
  • 雨掛かりとなる外壁に本工法を適用する場合は、打継ぎ部からの雨水浸入に対する配慮が必要である。
  • 耐力壁等の撤去は、工事期間中に、全住民が一時的に退去する必要も考えられる。
  • 構造スリットのある非耐力壁も、同様に本補修方法を参考にできる。なお、この場合は、全住民の一時退去の必要はない。
※1
:仮設の補強等により許容応力度内に収まる場合にも適用できる。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 建築改修工事監理指針 令和4年版(下巻)[p492~494(8.21.8)、p495~497(8.21.9)](国土交通省大臣官房官庁営繕部) (一財)建築保全センター (一財)建築保全センター
2 2017年改訂版 既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震改修設計指針 同解説 [p342(解図4.6-1)] (一財)日本建築防災協会/国土交通大臣指定耐震改修支援センター