補修方法編

界床に係る遮音不良
(軽量床衝撃音)
軽量床衝撃音に対する遮音性能のある
フローリング材(床下地材等を含む)への交換
SO-2-501
木軸・木枠
工事概要

界床の軽量床衝撃音遮断性能の向上を目的として、既存のフローリング材をはがして、床下地材を防振上有効な材料(製品)に交換し、フローリング材を新しく張り直す。同時に下階の天井を遮音上有効な防振吊り構造の天井に交換する。


木造軸組工法における一戸建て住宅の
床組の構成例(chord作成)
補修を行った部分を赤色で示す。
対応する不具合と原因 不具合
  • 界床に係る遮音不良 (椅子の移動音や物の落下音等の床衝撃音)(SO-2)
原因
  • 床下地材等の緩衝不足
  • 天井下地材等の防振及び遮音性能不足
適用条件
  • 本補修に伴う荷重の増加が構造計画上、支障とならない場合適用が可能である。
  • 下階の天井ボードに穴がないこと。
工事手順の例
1.事前調査
当事者へのヒアリングを行うと共に、現場での騒音の発生状況の確認を行い、原因調査を行う。
原則として界床の軽量床衝撃音遮断性能の測定を行い、実態を把握する。
  • 測定方法は、JIS A 1418-1によるものとする。
2.目標性能を満たした製品の選定
事前調査で得られた結果に応じて、適用条件及び目標性能を満たす制振材及び防振吊り木を選定する。(※1)
3.下階床・壁の養生、足場の設置
足場の設置等により、床や壁を傷つけないよう、シート、ベニヤ等で保護、養生を行う。
脚立、足場板等により、高さ約1.0m程度の足場を設置する。
4.床下地材・仕上材の撤去、下階天井下地材・仕上材の撤去
フローリング材、幅木、壁ボードの施工状態を確認し、解体する。
下階の天井材の施工状態を確認し、解体する。
5.床仕上材の施工 下地材の施工方法は各製造所の仕様による。以下に基本的な手順を示す。
根太上に合板を目違いに張る。
壁との取り合い部に音漏れを防ぐための遮音シート(塩ビ樹脂シート)を取り付ける。
アスファルト系面材を壁際から置き敷きする。マット間は目地を設け、比重が高く肉やせしにくいシーリング材を充填する。
アスファルト系面材の上に、合板を捨て張りする。
6.床仕上材の施工
下地合板の上に、遮音シート又はクッション材を張る。
フローリング材を施工する。
7.幅木の設置
幅木を取り付ける。
8.防振吊り木の施工、天井下地の施工
設置箇所を計画し、設置位置の既存躯体に墨付けする。
既存躯体に防振吊り木をビス留めする。
防振吊り木に吊り木をビス留めし、野縁を取り付ける。
野縁にせっこうボードを2枚張りする。
9.壁・天井仕上材の施工
壁、天井のせっこうボードに仕上材を施工する。
10.最終確認
工事全体の仕上がりを確認する。
養生等を撤去の上、片付け、清掃を行う。
原則として補修後の界床の軽量床衝撃音遮断性能の測定を行い、発現性能の確認を行う。
備考
(※1)
現在より高い軽量床衝撃音低減性能が発揮できる材料の組み合わせを採用する。防振吊り木は、1ヶ所あたりの負担荷重とばね定数とを算定し、天井の固有振動に対応した製品を選定する。
  • 遮音補修は、許容できる騒音の程度には個人差があることに十分に注意して行う必要がある。少しでも音が聞こえている以上、うるさいと評価される可能性を持っている。
    したがって、遮音補修によってある一定の遮音性能を確保すれば万全ということではなく、ユーザーの要求や対象空間の音環境を十分調査する必要があるとともに、補修前に居住者等に十分に説明し、現状に対する騒音の低減の程度を理解してもらうことが重要である。(参考:参考文献1)
  • 下階の天井ボード材に穴が空いている場合は、遮音性能が低減する可能性があるため、設備用配線やダウンライト等と天井が取合う部分にはシーリング材を施し、すき間をなくすことが必要である。
  • フローリング材の下地のクッション材を厚くすると、歩行感が損なわれたり家具が傾いたりする場合がある。家具が傾く傾向がある場合には適切な位置のクッション材を欠き、同厚の合板を敷くことが有効である。
  • 防振吊り木の設置箇所は、計算の上、適正に決定する必要があり、必要に応じて専門家に確認を行う。

施工上の注意点
  • 界床の遮音性能を確保するためには、フローリング材の振動が壁等を伝って下階に伝搬しないよう、材料が取り合う箇所はすき間を開けて施工する。
    • 床材周囲の壁際、サッシ下枠等との間は振動的に分離した構造とする。
    • 敷居や上がりかまち等の突き付け部には、すき間を開ける。当該すき間が居住者の使い勝手上不都合があると想定される場合は、すき間部にシーリング材を充填する。ただし、シーリング材の定期的なメンテナンスや、取合う木部材の収縮やあばれに対する補修が必要になる場合がある。
    • フローリング材の短辺部の接合部には飼いもの等を用いてすき間を開ける。
  • 床仕上げ厚さが変わることにより床に段差ができる場合があり、階段や敷居等の部分での段差緩和を検討する。また、建具の開閉に支障が出る場合についても同様に対応を検討する。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 部位別・図解 木造住宅の防音リフォームマニュアル [p140 7.3] (財)日本住宅リフォームセンター(現・(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター) (株)彰国社
2 音響技術No.168[1.低層集合住宅(アパート)界床の床衝撃音遮断性能について 3.床衝撃音遮断性能を向上(改善)する方法 3.1、3.2] (一社)日本音響材料協会 (一社)日本音響材料協会