補修方法編

降雨による漏水 バルコニー防水立上りの確保 W-1-515
木軸・木枠
工事概要

バルコニーの掃き出し開口部の防水立上りを確保するため、サッシを取り外してサッシ下の立上り壁を高くし、バルコニー防水を再施工して所定の防水立上りをとる。(*1)
防水層の種類はFRP防水を例とした場合を示す。


(補修前)(chord作成)

W-1-515_02.gif
(補修後)

防水工事があと施工の場合の
工事概要の例(補修後引用:参考文献1)
対応する不具合と原因 不具合
  • 降雨による漏水(W-1)
原因
  • バルコニーの防水立上り不良
適用条件
  • サッシ寸法を縮めても、採光等の法的条件を満たせる場合に適用可能である。
  • サッシ上枠・たて枠からの漏水ではないこと。
工事手順の例
1.事前調査
当事者からのヒアリングや現場での事前調査により、適用条件を満たしていることを確認する。
漏水の状況・原因を確認する。
バルコニー仕上げ面から防水立上り高さが120mm以上(引用:参考文献1)確保できるよう立上り壁の高さを設定する。
2.サッシ、内部造作材、外壁仕上材等、防水下地板、床防水層取合い部等の撤去
サッシ回りの内部造作材を取り外す。
サッシ回りの外壁仕上材および外壁の防水紙を見切りのよいところまで撤去する。
既存サッシを撤去する。
立上がり防水層の下地板および床防水層取合い部を撤去する(*2)
室内立上がり壁のボードおよび窓台等の下地材を撤去する。
3.立上がり壁の設置
サッシ下部の防水立上り高さが120mm以上確保できるように木造の立上り壁を設置する。
立上り壁の外側は、防水層の下地板を平滑に張る。
3から
防水工事があと施工となり、防水層を直接サッシ枠に重ねる場合(*1)
(備考*1のA図)
4.サッシの取付け
既存外壁の防水紙を撤去する際、外壁下地材についても撤去することとなった場合は、既存の下地と同様となるよう復旧する。
サッシ取付下地となる柱、窓台、窓まぐさ、面合わせ材等の不陸を調整する。
防水立上り高さ120mm以上確保するために開口高さを小さくしたサッシをあらたに取り付ける。
5.防水層の施工
防水の種類に適合した下地処理をする。
立上り防水層が床に折り返す床防水層取合い部は、折り返す施工範囲を下地処理する。(*2)
防水層は、サッシ下部については床面からの立上り高さ120mm以上かつ、さき付けしたサッシ下枠に到達するまで、サッシたて枠の両サイドについては床面からの立上り高さ250mm以上(引用:参考文献1)まで施工する。
サッシ下部の防水立上り高さの範囲内で、バルコニーの外部に面した腰壁にオーバーフロー管が設置されていない場合は、新たにオーバーフロー管を設置し適切に防水処理を施す。
6.外壁下地材等の復旧
サッシ回りに防水テープを施工する。木造(共通)W-1-506(サッシ回りの防水テープ、防水紙の再施工)を参照する。
外壁の防水紙、防水紙の上に施工する外装下地材を施工する。
7.防水層端部等のシーリング材の施工 次の箇所に入念にシーリングを施工する。
立上りの防水層端部とサッシ下枠およびたて枠の取合い部(*3)
外壁水切りとサッシたて枠の取合い部
8へ
3から
防水工事がさき施工となり、屋内側へ防水層を巻き込む場合(*1)
(備考*1のC図)
4.防水層の施工
防水の種類に適合した下地処理をする。
立上り防水層が床に折り返す床防水層取合い部は、折り返す施工範囲を下地処理する。(*2)
防水層は、サッシ下部については床面からの立上り高さ120mm以上かつ、窓台上面まで、サッシたて枠の両サイドについては床面からの立上り高さ250mm以上まで施工する。
サッシ下部の防水立上り高さの範囲内で、バルコニーの外部に面した腰壁にオーバーフロー管が設置されていない場合は、新たにオーバーフロー管を設置し適切に防水処理を施す。
5.サッシの取付け
既存外壁の防水紙を撤去する際、外壁下地材についても撤去することとなった場合は、既存の下地と同様となるよう復旧する。
サッシ取付下地となる柱、窓台上面に施工した防水層、窓まぐさ、面合わせ材等の不陸を調整する。窓枠側防水立上り部において、防水層の厚さ分が柱面と不陸になる場合は、入念に面あわせを行う。
防水立上り高さ120mm以上確保するために開口高さを小さくしたサッシの取付フィンと立上り防水層の間に防水上有効なパッキン材等を挿入し、サッシを取り付ける。
6.外壁下地材等の復旧
サッシ回りに防水テープを施工する。木造(共通)W-1-506(サッシ回りの防水テープ、防水紙の再施工)を参照する。
外壁の防水紙、防水紙の上に施工する外装下地材を施工する。
7.防水層端部等のシーリング材の施工 次の箇所に入念にシーリングを施工する。
立上り防水層に向けて打ち込んだくぎ頭
立上りの防水層端部とサッシたて枠の取合い部(*3)
外壁水切りとサッシたて枠の取合い部
8へ
8.外壁仕上材の復旧
外壁の仕上材を施工する。モルタル外壁については、 木造(軸組)G-2-101(モルタル塗替え(下地込み)) および木造(軸組)G-2-102(モルタル塗替え)、サイディング外壁の場合は木造(軸組)G-3-101(サイディングの張替え)を参照する。
9.外壁仕上材のシーリング材の施工
サイディング等乾式外装材の場合は、外装材とサッシたて枠および上枠の取り合い部にシーリング材を施工する。モルタル塗り外壁は、既存の状態がシーリング材を施工している場合は同様に復旧する。
10.最終確認
降雨時に浸水がないことを確認する。
備考
*1 サッシ下部の防水立上りの納め方は、サッシ取付けに対して、防水工事が「あと施工」となる場合と「さき施工」となる場合で異なる。
防水工事が「あと施工」となる場合(下図(A))は、サッシと防水層またはシーリング材の剥離が生じた場合、雨水浸入の危険性が高まる。また、防水層がサッシたて枠に沿って立ち上がるため、サッシたて枠と防水層端部との取合い部入隅のシーリング処理が重要となる。(*3の図のシーリング(A))
防水工事が「さき施工」となる場合(下図(B)及び(C))は、サッシの内側に防水層が施工されるため防水性能は高まるが、サッシ固定用のくぎが防水層を打ち抜くため防水上の欠点になりやすい。また、くぎ打ちによるFRP防水層の割れを防ぐため、あらかじめ、FRP防水層にくぎ打ちのための下穴をあけておくことが望ましい。なお、立上り防水層がサッシたて枠と柱との間に挟み込まれるため、防水層の厚さがサッシ建込みに影響を及ぼさないよう注意することが必要である。(引用:参考文献1)
サッシ取付がさき、防水工事が
あと施工になる納まり
防水工事がさき、サッシ取付が
あと施工になる納まり

03_木補_軸08_W-1-515_6_*1図A.jpg

A.防水層を直接サッシ枠に重ねる
納まり

03_木補_軸08_W-1-515_6_*1図B.jpgB.防水層の立上げを窓台上端まで
とする納まり
03_木補_軸08_W-1-515_6*1図C.jpgC.壁内側へ防水層を巻き込む納まり

サッシ下部の防水立上りおさまり例(引用:参考文献1)

*2 防水層の撤去範囲は、施工範囲を広げないことを目的として床防水層取合い部までを撤去する。ただし、既存床防水と新規立上り防水の一体性が期待しにくい場合は、床防水層の再施工まで範囲を広げる必要がある。
*3 下図(*1のA図のシーリング処理)のように防水層とサッシたて枠との入隅のシーリング(A)を外壁水切りまで達するように施工するため、防水層端部シーリング材の施工は、防水と外壁水切りの施工が終了した後に行う必要がある。
なお、サッシたて枠と外壁水切りとの入隅に施工するシーリング(B)は、水切り裏側のシーリング(A)上端部に雨水が浸入することを防ぐために施工する必要がある。

サッシたて枠のシーリング処理(引用:参考文献1一部加筆)

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 木造住宅工事仕様書 2023年版[p222~225、p225参考図8.15-2] (独)住宅金融支援機構 (株)井上書院