補修方法編

床の傾斜 梁の交換 F-1-106
木軸
工事概要

たわみ、腐朽、蟻害、あばれ等の生じた梁を取り外し、必要な断面、材種の新規の梁と交換し、取り付け直す工法。


梁受け金物(ツメあり)(chord作成)


柱取付梁受け金物(chord作成)
対応する不具合と原因 不具合
  • 床の傾斜(F-1)
  • 床のたわみ(F-2)
  • 床鳴り(F-3)
  • 外壁の傾斜(G-1)
  • 外壁のひび割れ・欠損(G-2)
  • 内壁の傾斜(N-1)
  • 勾配屋根の変形(はがれ・ずれ・浮き)(R-1)
  • 床振動(V-1)
  • 水平振動(V-2)
原因
  • 床組構成部材の断面寸法等の不足、配置・間隔の不良、材料の選択不良、材料の品質不良、腐朽・蟻害
  • 軸組材の断面寸法等の不足、材料の選択不良、品質不良
  • 小屋組材の断面寸法等の不良、配置・支持間隔の不良、選択不良、品質不良、腐朽・蟻害
適用条件
  • 取合いの柱・梁に極力変位を生じさせないため、交換する梁の仕口部分は、接合金物(梁受け金物)の使用を前提とする。
  • このため、仕口部分の接合金物(梁受け金物)の設置による構造耐力の安全性が確認された場合に適用可能である。
  • 通し柱、管柱のいずれにも適用可能である。(接合金物で対応)
工事手順の例
1.事前調査
現場での事前調査により、仕口部分が受ける荷重に対して構造耐力上安全であることを確認する。
2.足場の設置
交換する梁の直下の周囲に足場を設置する。
足場で床仕上げを傷つけないよう、シート、コンパネ等による保護、養生を行う。
3.仕上材等の撤去 以下の部位を取り外し、交換を要する梁を露出させる。
不具合の発生した梁の下部周辺の天井の仕上げ、下地材等
不具合の発生した梁の上下階でこの梁に接する建具および建具枠
不具合の発生した梁の上下の内外壁の仕上材、下地材等
不具合の発生した梁に架かる上階床の仕上材、下地材、根太や床梁
  • 不具合の発生した梁に架かる床梁は新設梁の落とし込みに支障ないように仕口の出を切り取る。ただし、新設梁を傾ぎ大入れ仕口とする場合は、横入れ込みとなるのでこれらの床梁の取り外しが必要となる。
4.関連構造材の仮支持
交換を要する梁に架かっている床梁は仮設の梁・柱などで現状の状態で支持する。
5.既設梁の撤去仕口補修
既設の梁の両仕口部付近を切断し、抜き取る。
仕口の穴に接着剤を併用して埋め木し、柱面を平坦に戻す。
6.新設梁の取り付け 以下の手順で新設梁を取り付ける。以下に梁受け金物(ツメあり)の例を示す。
柱側の胴差または梁の上端に合わせて、接合金物(梁受け金物)を位置決めし、釘等で仮留めする。
胴差または梁に下穴をあけ、ボルト等で梁受け金物を締め付ける。
新設梁を接合金物(梁受け金物)に落し込み、羽子板ボルト等で引き寄せる。
新設梁の側面に下穴をあけ、ボルト等で金物を締め付け、釘等を所定の本数打つ。

梁受け金物(ツメあり)(chord作成)
7.関連構造材の再設置
新設梁と床梁を梁受け金物を用いて接合する。
8.下地材・仕上材の復旧
撤去した上階の内壁および床の下地材、建具枠、仕上材を張り替える。
撤去した下階の天井、床および壁の下地材、建具枠、仕上材を張り替える。
撤去した建具を取り付ける。既設の建具にゆがみ等がある場合は調整し、調整の限界を超えるものについては交換して取り付ける。
  • 足場は適宜撤去する。
9.最終確認
水準器を用いて、床仕上げ面の水平を確認する。
工事全体の仕上がりを確認する。
足場などを撤去のうえ、片付け・清掃を行なう。
備考 施工上の注意点
  • 設備配管(電気・給排水・ガス)が影響を受ける可能性がある場合は、継手部分の確認を行う。
  • 補修する梁の上下、両側の居室は使用できないので、補修する梁の範囲によって仮住まいが必要になる場合がある。
  • 新規の梁と柱が構造上主要な部分となる場合には、その接合部が建基法告示平12建告第1460号「木造の継手及び仕口の構造方法を定める件」に適合していること。
  • 建設住宅性能評価書を交付された住宅で該当する等級が2以上のものでは、新規の梁の断面は、原則として品確法告示平13第1347号第5の1「構造の安定に関すること」の基準を満たすこと。
  • 新設梁設置の際、関係する柱、胴差、桁等に腐朽、蟻害が認められる場合は、それらの補修工事が発生する。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所