補修方法編

基礎の沈下 布基礎をべた基礎に変更(基礎天端レベル調整) K-1-102
木軸
工事概要

基礎荷重の作用面積を増大させることにより接地圧を減少させ、沈下の進行を止めるために、布基礎の内側の底盤コンクリートを増し打ちする方法である。沈下の修正は、「土台のジャッキアップ+基礎天端レベル調整(木造(軸組)K-1-105)」による。


工事概要図(chord作成)
対応する不具合と原因 不具合
  • 基礎の沈下(K-1)
原因
  • 地盤条件の設定過程の不良
  • 地盤条件設定値の不適合
  • 施工方法の選択不良
  • 基礎形式選定の不適合
  • 基礎の断面寸法の不良
  • 基礎の配置・間隔不良
  • 敷地の安全対策の不備
  • 既存擁壁への対応不備
適用条件
  • 専門家による地盤調査(支持力、沈下量、土質等)により、現況地盤の長期に生ずる力に対する許容応力度が20kN/㎡以上であることを確認し、変更後のべた基礎の構造方法が建基法告示平12建告第1347号「建築物の基礎の構造方法及び構造計算の基準を定める件」第一第3号の一から五までの基準を満たすものであること。ただし、自重による沈下その他の地盤の変形等を考慮して建築物又は建築物の部分に有害な損傷、変形及び沈下が生じないことが構造計算により確かめられる場合にあっては、この限りでない。
  • ジャッキアップ時に必要な反力が確保できること。
  • 既設の基礎が布基礎であること。
  • 技術的詳細については専門家に相談すること。
工事手順の例
1.事前調査
現場調査により、適用条件を満たしていることを確認する。
沈下の状況、原因を確認し、施工計画を立て、工期を決定する。
地中梁の配筋を必ず確認すること(特に建物内部基礎の立ち上がり部分の配筋)。
2.仕上材等の撤去 以下の部材等を撤去し、土台及び床下の地盤を露出させる。
台所流し、洗面台、便器等の設備器具の一時取り外し。
内装材、外装材の必要な範囲。(ジャッキアップ等の変形を避けるため、部材撤去後の強度に留意し、必要に応じ補強を行なう。)
建物外周部の壁、及び土台に接する内部の壁における仕上材、下地板等。(基礎に土台を固定するナットの取外し、取付けに必要な範囲。)
給排水・ガス等の設備配管の切断・先止め。

03_木補-軸01_K-1-102_5_2_図.jpg仕上材等の撤去状況(chord作成)
3.床下の地盤の掘削 次の方法により、床下の地盤を掘削する。
床下の地盤全面を基礎底盤の深さまで掘削し、基礎底盤を露出させる。
基礎底盤の内側の床下の地盤全面を、既存基礎底盤より15㎝程度深く掘削する。
4.基礎底盤のはつり
床下側の基礎底盤におけるコンクリートをはつり、ベース主筋を露出させる。はつった部分に付着した破片等の除去作業を行う。
5.床下の地盤の突き固め・捨てコンクリートの打込み・締固め 次の方法により、基礎底盤の補強工事の準備を行う。
基礎底盤の内側部分全面に割栗石、砕石等を深さ12cm程度敷き詰め、ランマーを用いて突き固める。
突き固めた上に捨てコンクリートを打込む。

捨てコンクリートの打込み状況(chord作成)
6.底盤部分の配筋
基礎底盤の内側に、格子状に底盤用の配筋(D13@200程度)を行う。
  • 配筋端部をL形に曲げ、ベース主筋との定着をとるなど、既設の基礎と増し打ちした底盤を充分に一体化させる。

底盤部分の配筋状況(chord作成)
7.コンクリートの打込み・締固め及び養生
基礎底盤の内側で配筋を行った部分に、既設の基礎底盤の高さまでコンクリートを打込む。

コンクリートの打込み状況(chord作成)
コンクリートを養生する。
  • 普通ポルトランドセメントを用いる場合の型枠の存置期間は、気温15℃以上の場合は3日以上、5℃以上15℃未満の場合は5日以上とする。なお、やむを得ず寒冷期に施工する場合は、気温に応じて適切な養生を行う。(引用:参考文献2)
8.基礎天端レベル調整
「土台のジャッキアップ+基礎天端レベル調整(木造(軸組)K-1-105)」により、レベル調整を行う。
9.仕上材等の復旧 以下の部分を復旧する。
1階床におけるすべての床束、大引き、床根太、下地板及び仕上材。
建物外周部の壁および土台に接する内部の壁における下地板、仕上材等。
給排水・ガス管の配管、接続。
台所流し等の設備器具の再取付け。
10.最終確認
レベルや水盛管等を用いて建物全体の設置高さ、水平を再度確認する。
器材及び資材を撤去・搬出のうえ、片付け・清掃を行う。
備考
  • 工事中に仮住まいの確保が必要である。
  • 工事実施後においても、定期的に沈下の進行状況を確認する。沈下の進行が認められる場合は、補修方法を再検討する必要がある。
  • ジャッキアップに伴い、外壁等にひび割れ等が生じた場合には、併せて補修する必要がある。
  • 既設の基礎が擁壁等に近接している場合は、注意して補修すること。
  • 擁壁を併せて補修する場合には、擁壁に有害な損傷、変形及び沈下が生じないように安全性を確認すること。(建基法令第142条及び建基法告示平12建告第1449号「煙突、鉄筋コンクリート造の柱等、広告塔又は高架水槽等及び擁壁並びに乗用エレベーター又はエスカレーターの構造計算の基準を定める件」参照)
  • また、建設住宅性能評価書を交付された住宅で該当する等級が2以上のものでは、補修された基礎は、原則として品確法告示平13第1347号第5の1「構造の安定に関すること」の基準を満たすこと。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 木造の詳細 1構造編 新訂三版[p120] (株)彰国社 (株)彰国社(2008年発行)
2 木造住宅工事仕様書 2021年版[p37(3.3.13)] (独)住宅金融支援機構 (株)井上書院