補修方法編

外壁の傾斜 筋かいの補強・緊結部補強 G-1-103
木軸
工事概要

内外装仕上材を撤去し、建入れ直し(柱や梁等の倒れ、出入り、水平度、曲がりなどを正規に修正する)をした上で、既設耐力壁の筋かいを補強する。補強する耐力壁は、できるだけ低倍率のものを用い、補強箇所数を多くし、補強後再び内外装仕上を復旧する。


筋かいおよび端部補強の例
(引用:参考文献1)
対応する不具合と原因 不具合
  • 外壁の傾斜(G-1)
  • 外壁のひび割れ、欠損(G-2)
  • 内壁の傾斜(N-1)
  • 水平振動(V-2)
原因
  • 軸組の断面寸法等の不足、材料選択不良、品質不良、架構・接合方法の不良
  • 耐力壁量の不良
適用条件
  • 上部構造の柱、梁に割れ等が無く、筋かいを設けた仕口および接合部に十分に耐力があることが確認された場合に適用可能な方法である。
  • 新たに筋かいを設けられる外壁がない場合にも、適用可能な工法である。
  • 筋かいの端部の仕口および筋かいが取り付く柱の柱脚および柱頭の仕口は、建基法告示平12建告第1460号「木造の継手及び仕口の構造方法を定める件」に適合していること。
工事手順の例
1.事前調査
現場での事前調査により適用条件を満たしていることを確認する。
傾斜の影響を受け、交換の必要のあるサッシ等の部品、材料を確認し、工事計画を立てる。(壁量の確保)
2.足場の設置および仕上げ等の撤去
外部足場を設置し、シート養生を行う。
以下の部分の仕上材を撤去する。
  • 修正する通りの壁仕上げ(内外共、間柱を露出させる。)
  • 上記壁に接する天井・床・直交する壁仕上げ(それぞれ関わる野縁・根太・間柱を露出させる。)
  • 建具枠・サッシ(修正する壁面に関わる部分。)
3.建入れ直し(屋起し)・筋かい補強
筋かいをはずし、仮筋かいを打つ。
胴差と土台に屋起し機(建入れ直しを行う道具)を固定し、下げ振りで倒れを見ながら、正規の位置まで建入れ直しをする。

屋起し機の設置例(chord作成)
各通りについて、建入れ直しした後、壁倍率を増加する仕様の筋かいを入れる。
筋かいの端部を金物で緊結する。(筋かいプレートBP-2)
  • 建入れ直しの際に、根太掛け、際野縁等の下地材が抵抗することがあるので、必要に応じて撤去する。

    筋かい30×90の端部接合方法の例(引用:参考文献1)


    筋かい45×90の端部接合方法の例(引用:参考文献1)


    03_木補-軸03_G-1-103_5_3_4図下.jpg

    たすき掛筋かい交差部(引用:参考文献1)
4.下地材、仕上材の施工
柱の上下端、横架材の端部仕口、継手を目視にて隙間がないことを確認し、必要に応じて金物で補強する。
間柱と筋かいを留め付ける。他の間柱もゆるみ等のないことを確認する。
仮筋かいを撤去する。
以下の順序で復旧する。
外壁下地→床下地→開口部→天井下地または床下地(フローリング共)→外壁仕上げ→壁、天井ボード張り→壁、天井仕上げ→床仕上げ
5.最終確認
外壁の垂直および工事全体の仕上り等を確認する。
足場などを撤去のうえ、片付け、清掃する。
備考 施工上の注意点
  • 給排水衛生設備、電気設備は各工程に合わせて撤去、復旧を行う。
  • 築後数年経た建物の建入れ直しは、新築時に比べて仕口の乾燥が進み、さらには下地材・仕上材が抵抗として働くので、できるだけ軸組のみを露出させる必要がある。
  • 振動に関する不具合に当該補修方法を適用する場合、「5.工事手順の例」における建入れ直しの工程は必要ない。
  • 建設住宅性能評価書を交付された住宅で該当する等級が2以上のものでは、新設する筋かいと胴差・通し柱の接合部が、品確法告示平13第1347号第5の1「構造の安定に関すること」の基準を満たすこと。
  • 耐力壁を補強する場合は、応力の集中を避けるために、できるだけ低倍率のものを用い、補強箇所数を多くするように行う。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 木造住宅工事仕様書 2021年版[p82(5.1)、p86参考図5.1.9-1(B)、参考図5.1.9-2、p87(5.2)、p90~93参考図5.2.2-1ハの仕口、ニの仕口、p97参考図5.2.2-3] (独)住宅金融支援機構 (株)井上書院