補修方法編

結露 外壁断熱材の交換 W-3-101
木軸
工事概要

外壁の既設の断熱材等を撤去し、所定の性能の断熱材に入れ替える。


充填断熱工法(最下階の床と外壁の取合い部
の施工例)(引用:参考文献1一部加筆)

外張断熱工法(外壁と屋根の取合い部の施工例)
(引用:参考文献1一部加筆)
対応する不具合と原因 不具合
  • 結露(W-3)
原因
  • 平面計画の配慮不足
  • 断熱材の仕様、配置箇所不良、施工不良
  • 施工中の養生不足
適用条件
  • 外側から施工する場合は外側から施工できるスペ-スを確保できること
工事手順の例
1.事前調査
当事者からのヒアリングや現場での事前調査により、上記の適用条件を満たしていることを確認する。
  • 居住しながらの工事の場合、工事を進めるローテーションを考える必要がある。その際は部屋別に以下の工程を繰り返す。
2.内装仕上げ材等の撤去
必要に応じて足場を設置し、養生を行う。
木軸等を傷めないように、再施工が必要な範囲まで仕上げ材および下地材を撤去する。
3.断熱材の撤去
既設の断熱材を撤去する。
可能な限り防湿材も撤去する。
木造躯体を確認し、腐朽等が生じていた場合は適切な処置を施す。
(充填断熱工法で屋内側から施工する場合)
4.断熱材の施工
所定の性能の断熱材を施工する。
5.防湿フィルム   張り(*1)
防湿フィルムを張る。

外壁の構成例
(引用:参考文献1一部加筆)
  • できるだけ継ぎ張りを避けて張る。
  • 防湿フィルムが断熱材の室内側に密着していることを確認する。
  • 防湿フィルムは天井側と床側の断熱材と下地材の間にもさし込んで入れ、継ぎ目を縦、横とも下地材のある部分で30㎜以上重ね合わせ、その部分を合板、乾燥木材、せっこうボード等の材料で挟み付ける。

防湿層の施工(引用:参考文献2)
(防湿層は寸法の大きいものを用いる)
6.内装仕上げ材等の施工
7.最終確認
工事全体の仕上がりを確認する。
足場、養生等を撤去のうえ、片付け・清掃を行う。
(外張断熱工法で屋外側から施工する場合)
4’.防湿フィルム張り(*1)
防湿フィルムを張る。
  • できるだけ継ぎ張りを避けて張る。
  • 防湿フィルムは継ぎ目を縦、横とも下地材のある部分で30㎜以上重ね合わせる。(参考:参考文献1)
5’. 断熱材の施工
所定の性能の断熱材を施工する。
  • ボード状又はフェルト状断熱材の突付け部は柱などの下地がある部分にあわせ、すき間が生じないように取り付ける。(参考:参考文献1)
6’.透湿防水シート張り(*2)
透湿防水シートを張る。
  • 透湿防水シートは、下方向から上方向によろい状に張り上げ、重ね幅は上下方向90mm、左右方向150 mm以上とする。(参考:参考文献1)
透湿防水シートは、できれば庇裏、小屋裏まで深く差し込んで固定する。
7’.通気胴縁を施工(*3、4、5)
通気胴縁を設置する。
  • 通気方向を妨げないよう注意する。

縦胴縁を用いた開口部まわりの施工例(引用:参考文献1)

横胴縁を用いた開口部まわりの施工例(引用:参考文献1)
8’.外装仕上げ材等の施工
9’.通気確認(*6)
通気層の下端と上端の開口を目視により確認する。
10’.最終確認
工事全体の仕上がりを確認する。
足場、養生等を撤去のうえ、片付け・清掃を行う。
備考
(*1)平13国交告第1347号(最終改正 令4国交告第1108号)において、JIS A9521(建築用断熱材)に規定する発泡プラスチック断熱材、JIS A9526(建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォーム)に規定する吹付け硬質ウレタンフォームA種1又はA種2に適合するもの及びこれらと同等以上の透湿抵抗を有するプラスチック系断熱材で、気密補助材を用い有効にすき間を封じているものを用いる場合は、防湿層の設置を必要としないとされている。また、「コンクリート躯体又は土塗壁の外側に断熱層がある場合」、「床断熱において断熱材下側が床下に露出する場合又は湿気の排出を妨げない構成となっている場合」、「断熱層が単一の材料で均質に施工される場合で透湿抵抗比が地域区分による規定の値以上である場合」等においても、当該部位の防湿層の設置を省略することができる。(参考:参考文献5)
(*2)透湿防水シートの他、透湿性の高いシージングボードを用いてもよい。(参考:参考文献1)
(*3)通気層の厚さは15㎜程度とされることが多い。
(*4)外張断熱通気構法においては、柱から外装材までの距離が断熱材及び通気胴縁の厚さ分だけ長くなることにより通気胴縁が垂れ下がる場合があるため、通気胴縁の適切な留付け方法(留付け材の種類、間隔など)を選択する必要がある。
(*5)サッシまわりの胴縁及び通気胴縁に、防腐処理された胴縁を使用する場合は、防腐処理に使用している薬剤が透湿防水シートの性能を低下させることがあるため、施工中は胴縁を濡らさないようにし、胴縁の施工後は速やかに外装材を施工するよう留意する。(参考:参考文献1、6)
(*6)通気層の機能を確認する方法は、目視の他、煙試験により、外壁下端部から煙を入れ上端の開口に抜けていることを確認する方法もある。

施工上の注意点
  • 壁内通風が生じる構造(外壁通気構法による通気を除く。)は、これを防ぐために、軸組内の床・天井等との取合い部などの柱、間柱、横架材等との間に隙間なく断熱材を充填するなどの気流止めの措置を講ずる。
  • 断熱材を充填する場合は、周囲の木枠との間および防湿フィルム等との間にすきまが生じないよう均一にはめ込む。
  • 耳付の防湿材を備えたフェルト状断熱材を取り付ける場合には、柱及び間柱の室内側にとめ付ける。
  • 床下の換気措置が必要の場合でねこ土台を用いている場合、透湿防水シートで換気口を塞ぐことがないよう注意が必要である。
  • 設備配管又は配線等により防湿フィルム等が切れる部分は、気密層を連続させるよう処理する。
  • 外壁、屋根及び基礎が外張断熱工法の場合、熱橋は生じにくい。ただし、外張断熱工法と充填断熱工法を併用している場合は、充填断熱工法同士又は外張断熱工法と充填断熱工法の取合いにおける部位に生じる熱橋部(ボルトや接合金物など)の結露に注意が必要である。必要に応じて熱橋部の保温措置を講じる。(木造(共通)W-3-502を参照)

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 木造住宅工事仕様書 2021年版[p154~155(7.4.2,7.4.3, 7.4.4),p162~163(8.4),p164参考図8.4.1, p292参考図1-1.5.4(C)(c)一部加筆,p297参考図1-1.6.3(A)(c)一部加筆,p282参考図1-1.4.7(A)一部加筆] (独)住宅金融支援機構 (株)井上書院
2 <防湿層の施工の図>木造住宅工事仕様書 平成22年改訂【旧版】[p130図7.4.3-2](住宅金融支援機構) (財)住宅金融普及協会
3 住宅の平成25年省エネルギー基準の解説[p329~330] 住宅の平成25年省エネルギー基準の解説編集委員会 (一財)建築環境・省エネルギー機構
4 建築工事標準仕様書・同解説 JASS24 断熱工事 (2013)[p104~121] (一社)日本建築学会 (一社)日本建築学会
5 住宅性能表示制度 日本住宅性能表示基準・評価方法基準 技術解説(新築住宅)2020[p308~315](国土交通省住宅局住宅生産課/国土交通省国土技術政策総合研究所/国立研究開発法人建築研究所) (一財)日本建築センター 工学図書(株)
6 JIS A6111:2016 透湿防水シート[p解5~6(解説7)] 揖斐敏夫 (一財)日本規格協会