補修方法編

床鳴り 床下地・仕上材の張替え F-3-701
RC造・S造
工事概要

床下地材を交換し、床仕上材を新しく張り直す。


床組の構成例(chord作成)
対応する不具合と原因 不具合
  • 床の傾斜(F-1)
  • 床のたわみ(F-2)
  • 床鳴り(F-3)
  • 床振動(V-1)
  • 内装仕上材のひび割れ・はがれ等(I-2)
原因
  • 床構成部材等の断面寸法等の不足、材料の選択不良、配置・間隔の不良、架構・接合方法の不良
  • 下地・仕上材の選択不良、断面寸法等の不足、品質不良、保管・管理の不良、割付けの不良、 接合留付けの不良、施工精度の不良
適用条件
  • 直床仕上げを置床工法にする場合には、床高が上がるため、十分な天井高さが確保されていることが必要となる。
工事手順の例
1.事前調査
現場調査により適用条件を満たしていることを確認する。
スラブ面の不陸がないか目視等により確認し、スラブの不陸の処理方法を検討する。
補強・交換を必要とする範囲を確認し、工事計画を立てる。
床ふところ内の配管位置を設備図等により確認した上で、新設する床の工法等を決定し下地材の割付計画を立てる。
2.床下地材・仕上材の撤去
フローリング・幅木・壁ボードの施工状態を確認し、以下の順序で解体する。
  • 幅木
  • フローリング等の床仕上材
  • 床下地材
3.コンクリート下地の水平の確保(直床仕上げの場合)
コンクリート下地の汚れ・付着物等を除去する。
コンクリート下地に不陸がある場合には、最も高いレベルを基点に全面補修(セルフレベリング)または部分補修(モルタル塗)等の処理を行う。
不陸の高い部分をはつることは構造床版の強度低下を招くばかりでなく、遮音性能の低下にもつながるので極力避ける。
  • セルフレベリングの乾燥養生期間は夏場は3日、春・秋は7日、冬場は14日程度とする。
4.床下地材の施工
コンクリート下地の汚れ、付着物等を除去する。
下地材の設置方法は各製造所の特記による。以下に大まかな流れを示す。

<乾式二重床工法とする場合>
フローリング張りの場合には際根太受けの束を450mmピッチ以下で施工する。(建具まわりの際根太の固定は強固に行う。)
ベース金物を割付計画に沿って設置する。
パネルを敷き込む。
捨張り合板をパネルに留め付ける。

<発泡プラスチック系床下地の場合>
モルタル団子工法、空練りモルタル工法(畳敷きの場合に用いる)、樹脂モルタル又は接着ペースト工法等を用いて、各製造所の仕様により、パネルを敷き込む。
カーペット張り等とする場合には、捨張り合板をパネルに留め付ける。
5.床仕上材の施工
以下により、仕上材を取り付ける。
<フローリング直床仕上げの場合>
<フローリング仕上げの場合>
  • 乾式二重床工法の場合には、釘打ちにより留め付ける。
  • 発泡プラスチック系床下地の場合には、接着剤併用の釘打ちにより留め付ける。
<ビニル床シートの場合>
  • 不陸・目違い・たるみ等のないように、接着剤を用いて捨て張り合版に留め付ける。
<カーペットの場合>
  • 接着剤、その他の留め付け方法により、捨張り合板に留め付ける。
仕上り具合を確認し、汚れ、床のきしみ等がないことを確認する
6.幅木の復旧
幅木は床仕上材に密着させ、接着剤併用釘打ちまたは両面接着剤貼りとする。
7.清掃
備考
  • 床下地・仕上げの取替えにあたり、遮音性の低下がないように注意する。
    (注)
    防音室等の浮床工法の場合には、元の設計の仕様を充分に調査した上で、床の留付け方法を決める。
床下地・仕上げの張り替えの目的に合わせて以下の様な注意が必要である。
■床下地のレベル調整
<乾式二重床工法の場合>
  • 床下パネルの支持ボルトの高さを調整し、床パネルを水平に敷き直す。
<発泡プラスチック床下地の場合>
  • 空練りモルタル又はモルタル団子の高さを調整し、床下地を水平に敷き直す。

発泡プラスチック床下地工法の例(chord作成)
<直床仕上げの場合>
  • 最も高いレベルを基点にセルフレベリング材を流し、コンクリート床レベルを水平に補修する。
■床鳴り防止措置
<乾式二重床工法の場合>
  • 出来るだけ「きわ根太基準工法」を採用し、きわ根太をしっかり取付け、支持ボルトの高さをがたつきがないよう調整する。
  • 「きわ根太なし置床工法」の場合は、パネル相互間、パネルと壁との間に適正な隙間をとる。

きわ根太無し置床工法


きわ根太基準工法

乾式二重床工法の例(chord作成)
<発泡プラスチック床下地の場合>
  • 床下パネルは、厚さ65㎜以上のものを使用する。配管の欠き込みは必要最小限とし、パネルを寸断しない。製造所の施工要領書にならい、一定の間隔で適切な大きさのモルタル団子を配置する。配管用の欠き込み部がモルタル団子の定位置となる場合は、モルタルを充填し、配管の両脇で接地させる。なお、モルタルを充填していない部位の管とパネルとの間は擦れないように、若干の隙間をあける。
  • 配管のための欠き込みは、床下パネルの根太部分を避ける
  • 配管を一箇所に集中させない。
    欠き込み部分の幅が、35㎝以下となる様に分散配管する。(配管を集中させる場合における配管の幅は30㎝以内とする。)欠き込み部と欠き込み部の間隔は15㎝以上離し、配管どうしの間隔は20㎝以上離す。欠き込み幅が大きい場合は、両側に補強根太をしっかり設け、12㎜以上の補強用合板でカバーする。

(引用:参考文献4一部加筆)(引用:参考文献5)
発泡プラスチック床下地の例


発泡プラスチック床下地の断面例(chord作成)
  • 配管は、斜め配管をしない。配管の欠き込みは、必要最小限とし、パネルを寸断しない。

配管方法の例(引用:参考文献4)
  • 床下パネルの根太部分にフローリング材の継目が位置するよう割付ける。

フローリング材の割付け例(引用:参考文献4)
<直床仕上げの場合>
  • 出入口枠と接する部分はきわ根太を入れる。又は枠との間に隙間を設ける。

    出入り口枠回りの納め例(引用:参考文献6)
  • セルフレベリング材の乾燥に必要な養生期間をとると共に、フローリングの伸びを見越して壁際との間に隙間を設ける。

    フローリング施工の不具合例(引用:参考文献6)
  • 下地合板の伸縮によるジョイント部のこすれ音防止のため、下地合板相互に適正な隙間を設ける。
■床下地の強度補強
<乾式二重床工法の場合>
  • 床下パネル支持ボルトを増やした床下パネルに取替え、水平に敷き直す。
<発泡プラスチック床下地の場合>
  • 荷重の集中するところは過重を考慮した存来根太組に替える。(ただし、遮音性の劣化が予想されるので、現状のままで過荷重を分散して対応することが望ましい。)
<直床仕上げの場合>
  • フローリング下面クッション層に硬化剤を注入して固め、沈み込みを防止する。(ただし、遮音性能の劣化が予想されるので、現状のままで過荷重の分散で対応することが望ましい。)

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 マンションリフォーム専有部分施工マニュアル(2017年)[p30~31] (一社)マンションリフォーム推進協議会 (一社)マンションリフォーム推進協議会
2 公共住宅建設工事共通仕様書 令和元年度版[19章内装工事1~3節p235~239、5~6節p243~246、10~11節p253~255] 公共住宅事業者等連絡協議会 (株)創樹社
3 品質管理マニュアル1991 建築施工編[p.26~28] 住宅都市整備公団建築部 住宅都市整備公団建築部
4 品質管理マニュアル2006 建築設計・施工編[p.C-2] 住宅都市整備公団建築部 住宅都市整備公団建築部
5 分譲マンションの瑕疵・クレーム事例とその対応策[p46~59] (社)大阪建設業協会 (社)大阪建設業協会