補修方法編

降雨による漏水 パラペット笠木の交換 W-1-409
S造
工事概要

既存の笠木を撤去し、防水紙(透湿防水シート)を再施工して外側シーリング形式の笠木に交換する。


補修前の例

補修後の例(参考:参考文献1)
対応する不具合と原因 不具合
  • 降雨による漏水(W-1)
原因
  • 関連部位の防水処理不良
  • 防水層の施工不良
適用条件
  • パラペットの両側がサイディング等の乾式外壁でできている場合に適用が可能。
  • 漏水の原因が、強風などによる外壁面とのすき間からの雨水の浸入である場合に適用する。
工事手順の例
1.事前調査
当事者からのヒアリングや現場での原因調査により、適用条件を満たしていることを確認する。
2.足場の設置
該当部分に足場を設置し、解体時に発生する粉塵や吹付け塗布材が隣地に拡散しないようにその外回りに防塵シートを張る。
3.笠木の撤去
漏水が生じている箇所を含む既存笠木全体を撤去する。
4.外壁材およびシーリング材の撤去
対象部位のパラペット両側の外壁材を撤去する。
  • 防水紙の不具合が外壁撤去範囲より広い場合は、さらに必要な範囲まで外壁材を撤去する。
残存する外壁材のジョイント目地に残ったシーリング材をていねいに撤去する。
5.防水紙の撤去
不具合が生じている防水紙を撤去する。
  • 不具合が生じている防水紙がパラペットの両側にかかる場合は、張り替えに必要な範囲まで撤去する。
防水紙が張られていた鉄骨の間柱または胴縁に残存する粘着材または接着剤は、ていねいに撤去する。
6.防水紙(透湿防水シート)の施工
透湿防水シートは、鉄骨の間柱または胴縁に両面粘着防水テープまたは接着剤等(参考:参考文献2)を用いて張る。
一般部の張り方は横張りとする。透湿防水シートの上下の重ね幅は90㎜以上、左右の重ね幅は150mm以上とする。(参考:参考文献2)
既存防水紙との重ね幅も同様とする。上下の重ねは、上の透湿防水シートが下の透湿防水シートに被さる張り方とする。
パラペット上部は、次の方法で張る。
  • パラペットの片側から反対側立ち下げ寸法150mm以上(引用:参考文献3)まで張り、その反対向きも同様に張ったのち、両側に100mm程度(引用:参考文献3)立ち下げる鞍掛シートを張る。
7.サイディングの取り付け
(パラペット両面)
以下のようにサイディングを張る。
シーリング材の三面接着防止および目地部分より浸入する雨水の一次防水のために専用の目地ジョイナーを縦目地部分に取り付ける。
サイディングは通気留付金具を使用し、製造所の仕様により取り付ける。なお、パラペット上端部のサイディングの留め付けに、通気留付金具に代わる受け材等を使用する場合は、通気等の排出を妨げないように取り付ける。
目地部分の両側にシーリング材のはみ出しを防ぐためにマスキングテープを張る。
サイディングのシーリング目地小口にシーリング材専用プライマーを塗り、シーリング材のはく離を防止する。
シーリング材を充填し、ヘラ等で押し込むようにして表面を平滑に仕上げる。
8.笠木取付金物の施工
透湿防水シートにビスの孔あけをする箇所は、防水処理を適切に行う。
笠木取付金物の下面に防水テープを張り(参考:参考文献3)、所定の位置にビス留めする。

パラペット笠木部材の構成例(引用:参考文献4)
9.笠木はめ込み
笠木を笠木取付金物にはめ込む。
  • 笠木と笠木との継手部(ジョイント部)は、ジョイント金具とはめあい方式によりはめあい、取付けを行うものとする。ジョイント部はオープンジョイントを原則とし、温度変化による部材の伸縮への対応のため、定尺が4m程度の場合5~10㎜のクリアランス(目地)を設ける。(引用:参考文献4)
  • 笠木と笠木の各ジョイント部に取り付けられるジョイント金具は、笠木のジョイントでの雨水に対して排水機構の溝形断面形状をもつものとする。(引用:参考文献4)
10.笠木外側のシーリング材の施工
パラペット外側の笠木下端部にシーリング材を施工し、外壁仕上材との間の止水処理を施す。
11.最終確認
散水等により浸水がないことを確認する。
足場の撤去のうえ、片付け、清掃を行う。
備考 施工上の注意点
  • パラペットを有する住宅では、屋根を緩勾配の金属板ぶきとし、パラペット内側を乾式外壁材で仕上げることがある。補修に際してパラペット内側の乾式外壁材を撤去するときに、屋根ふき材との納まり部分に影響を及ぼすことがあるため、解体、復旧方法等には注意が必要である。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 まもりすまい保険設計施工基準・同解説(2019年版)(第2版)[p49] 住宅瑕疵担保責任保険法人住宅保証機構(株) 住宅瑕疵担保責任保険法人住宅保証機構(株)
2 窯業系サイディングと標準施工(第4版)[p50(2.7.4防水紙張り)] (一社)日本窯業外装材協会 (一社)日本窯業外装材協会
3 木造住宅工事仕様書 2023年版[p226(8.16)] (独)住宅金融支援機構 (株)井上書院
4 建築改修工事監理指針 令和4年版(上巻) [p324(図3.9.3)~326](国土交通省大臣官房官庁営繕部) (一財)建築保全センター (一財)建築保全センター