補修方法編

床のたわみ ALCパネル床の取替え(敷設筋構法) F-2-402
S造
工事概要

不具合の生じた部分のALCパネル床(以下、パネル)を取り替える。

「転載の承諾を得られなかった箇所に網掛けをしております。」

工事概要の例(引用:参考文献1)
対応する不具合と原因 不具合
  • 床の傾斜(F-1)
  • 床のたわみ(F-2)
  • 床鳴り(F-3)
  • 床振動(V-1)
原因
  • 骨組や床構成部材等の配置・間隔の不良、架構・接合方法の不良
  • 工事中の一時的な過荷重の積載
  • 床構成部材等の材料選択の不良、材料の品質不良、配置・間隔の不良
  • 床スラブの鉛直支持力の不足
  • パネルの取付け又は組立ての不良
適用条件
  • パネル等床版に変形が生じ、既設の鉄骨大梁に過大なたわみ等がない場合に適用可能な方法である。
  • 床ブレースをそのまま残す場合に適用する。
工事手順の例
1.事前調査
現場調査において、適用条件を満たしていること、また工事の妨げになるものがないことを確認する。
床等の変形を測定し、パネルを交換する部分等を確認し、工事計画を立てる。
2.足場設置・仕上材等の撤去
パネルを交換する直下の周囲に足場を設置する。
足場で床仕上げ(フローリング等)を傷つけないよう、シート及びコンパネ等による保護・養生を行う。
以下の部位を撤去し、パネルを設置する大梁及びパネル下面を露出させる。
  • パネルを交換する上階床の下地材、仕上材
  • パネルを交換する下階天井の下地材、仕上材
  • 必要に応じて上下階の内壁及び建具・建具枠
3.パネルの撤去
パネル及び傷んでいる取付け金物を撤去し、柱・梁等の躯体を露出させる。(※1)
4.パネルの施工(参考:参考文献2)
パネルは、表裏を正しく置き、長辺は突き合わせ、短辺は20㎜程度の目地を取り、支持梁上になじみよく敷き並べる。
取付け金物は、厚さ6㎜以上とし、溶接などにより受材に固定する。目地用鉄筋は、取付け金物の孔に通し、パネルの長辺溝部に金物から500㎜以上挿入する。
目地部にモルタルを充填する。モルタルは、パネル上面より5㎜程度盛り上げておき、水引き具合いを見計らい、定規等でパネル上面にそろえて削り取り、平滑に仕上げる。
目地部はモルタル施工後24時間(冬季は48時間)有害な振動や荷重を与えないよう注意する。
5.検査確認
パネルの施工の仕上りを検査・確認する。(水平度など)
6.下地材・仕上材の復旧
撤去した上階の内壁及び上階床について下地材、仕上材を張り替える。撤去した建具を取り付ける。既設の建具にゆがみ等がある場合は調整し、変形してもどらないものについては交換する。
撤去した下階天井の下地材、仕上材を張り替える。建具等の変更がある場合は、それに応じて新規の建具枠を取り付ける。既存の建具にゆがみ等がある場合は調整し、変形してもどらないものについては交換して取り付ける。
7.最終確認
水準器を用いて床仕上げ面の水平を確認する。
足場等を撤去のうえ、片付け・清掃を行う。
備考
(※1)
取付け金物が傷み、変形している場合、交換が一般的であるが、補強による補修も考えられる。
  • パネルの取替えのみでは、再度不具合が起こる可能性が高いことから、スラブ下面への鉄骨小梁の増設(S造F-2-401)と併用する場合がある。
  • パネルのひび割れ・欠損に当該補修方法を適用する場合は、専門家の調査により原因となる問題が取り除かれていることを確認する。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 建築工事標準仕様書・同解説 JASS21 ALCパネル工事(2018)[p129] (一社)日本建築学会 (一社)日本建築学会
2 公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和4年版[p114~115](国土交通省大臣官房官庁営繕部) (一社)公共建築協会 (一社)公共建築協会
3 2009年版 ALCパネルを用いた建築物の構造関係技術基準解説書(国土交通省国土技術政策総合研究所、独立行政法人建築研究所) 2009年版 ALCパネルを用いた建築物の構造関係技術基準解説書編集委員会 全国官報販売協同組合