補修方法編

基礎のひび割れ・欠損 充填工法 K-2-402
S造
工事概要
  • コンクリート表面のはがれ、はく落の生じている欠損部にエポキシ樹脂モルタル(又はポリマーセメントモルタル)を充填する工法である。(参考:参考文献4)
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エポキシ樹脂モルタル充填の場合
(引用:参考文献4)


ポリマーセメントモルタル充填の場合
(引用:参考文献2)
対応する不具合と原因 不具合
  • 基礎のひび割れ、欠損(K-2)
  • 降雨による漏水(W-1)
原因
  • 基礎の配筋方法の不良(配筋位置のずれ等)
  • 柱脚接合部の配筋の納まり等の不良
  • 床下換気口等、開口部補強等の補強筋の不良
  • コンクリートの打込み・締固め、養生不良
適用条件
  • 専門家の調査により、欠損の原因となる問題が取り除かれていることを確認した場合に適用する。
  • ポリマーセメントモルタルは、1回に可能な塗り厚が少ないため、欠損が深い場合は、エポキシ樹脂モルタルが適する。(参考:参考文献2)
  • 鉄筋が露出していない場合に適用する。(参考:参考文献2)(※1)
  • 補修により、美観上の問題が生じないことを確認した場合に限り、適用する。
工事手順の例
1.事前調査
現場調査により適用条件を満たしていることを確認する。
ひび割れ・欠損の状況を確認し、工事計画を立てる。
充填材、プライマーの選定を行う。
2.仕上材等の撤去
施工する基礎回りの地盤を10~15cm程度掘り下げる。
必要な場合は、施工範囲をシート等で養生する。
外装仕上材を撤去し、コンクリート表面を露出させる。
3.欠損部の清掃
ぜい弱部をはつり取り、健全なコンクリート下地を出す。(参考:参考文献7)
4.プライマーの塗布
下地面に刷毛等を用いてプライマーを塗布する。(参考:参考文献4)
5.充填剤の充填
エポキシ樹脂モルタル(またはポリマーセメントモルタル)を充填する。
ポリマーセメントモルタルの場合は、ダレが生じやすいので数層に分けて塗る必要がある。(参考:参考文献2)
6.仕上材等の復旧
撤去した仕上材等の復旧を行う。
7.最終確認
工事の仕上がりを確認する。
仮設、養生シート等を撤去し、後片付け、清掃を行う。
備考 (※1)欠損部において鉄筋が露出している場合や、錆汁が生じて内部の鉄筋が腐食し
ていることが懸念される場合は、「建築改修工事監理指針 令和4年版(上巻)」[4章 
8節 鉄筋コンクリートの鉄筋腐食の補修]を参考にし鉄筋腐食に対する補修として材料
及び工法について変更の必要性を検討する。また、欠損がさらに大規模な場合は、コ
ンクリートの打ち直しを伴う構造的補強が必要となる。(引用:参考文献2)
  • 鉄筋のかぶり厚さが不足する場合の補修に関しては、基礎梁表層面の打直し補修(S造K-2-405)による。
  • エポキシ樹脂モルタルは、1回の塗り厚が大きくできるので施工性が良いが、セメント本来の成分とは異なるので注意する必要がある。(参考:参考文献1、参考文献4)なお、エポキシ樹脂モルタルはそれ自体が可燃性材料なので、亀裂や軽微な欠損部に充填する場合等、使用量の少ない軽微な補修では使用できるが、かぶりコンクリートとして部材表面等に塗布するような使用方法はできない。(引用:参考文献1)
  • ポリマーセメントモルタルは、エポキシ樹脂モルタルに比べてダレが生じやすいので数層に分けて塗る必要があり、1回の塗厚は7㎜程度とする。また、通常のモルタルと同様で硬化収縮性が高く、施工条件によってはひび割れが発生しやすいので、適切な養生が必要である。(引用:参考文献2)

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 建築工事監理指針 令和4年版(上巻)[p483](国土交通省大臣官房官庁営繕部) (一社)公共建築協会 (一社)公共建築協会
2 建築改修工事監理指針 令和4年版(上巻)[p351,p368,p380~383 ,p389~390,4章8節鉄筋コンクリートの鉄筋腐食の補修](国土交通省大臣官房官庁営繕部) (一財)建築保全センター (一財)建築保全センター
3 建築改修設計基準及び同解説【絶版】[p63](建設大臣官房官庁営繕部) (財)建築保全センター (財)建築保全センター
4 打ち放しコンクリート外壁の補修・改修技術[p116~118](建設大臣官房技術調査室) 外装仕上げおよび防水の補修・改修技術出版企画編集委員会
(財)日本建築センター
(財)建築保全センター
(財)日本建築センター
(財)建築保全センター
5 建築改修実務事典[p324] 建築改修実務事典編集委員会編集 (株)産業調査会事典出版センター
6 鉄筋コンクリート造建築物の耐久性調査・診断および補修指針(案)・同解説[p163~171] (社)日本建築学会 (社)日本建築学会
7 公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和4年版[p82](国土交通省大臣官房官庁営繕部) (一財)建築保全センター (一財)建築保全センター