補修方法編

外壁の傾斜 鉛直(水平)ブレースの取替え G-1-406
S造
工事概要

ブレースが変形した場合、骨組の剛性を向上させるため、変形した鉛直ブレース(または水平ブレース)を取替える。


09_S補-03_G-1-406_2_図.jpg筋かいの取替え図(chord作成)
対応する不具合と原因 不具合
  • 外壁の傾斜(G-1)
  • 外壁のひび割れ、欠損(G-2)
  • 内壁の傾斜(N-1)
  • 水平振動(V-2)
原因
  • 鉛直構面(水平構面)のブレースの変形、接合部の緩み
適用条件
  • 専門家の調査により、ブレースを取替えれば不具合が解消する場合に適用する。(※1)
  • 工事期間中の既存のブレースを撤去した状態においては、長期・短期荷重によって架構に生ずる力が長期・短期許容応力度内に収まっていること。ただし、仮設の補強等により許容応力度内に収まる場合にも適用できる。
工事手順の例
1.事前調査
現場調査と設計図等により、ブレースの設置箇所及び形状等を調査し、変形のあるブレースを特定する。
現場調査において、適用条件を満たしていること、また工事の妨げになるものがないことを確認する。
傾斜等の影響を受け、交換の必要のあるサッシ等の部品・材料を確認し、工事計画を立てる。
2.足場設置・仕上材等の撤去
足場を設置する。
以下の部位を撤去し、ブレースを取替える柱または梁を露出させる。

<鉛直ブレースの場合>
  • ブレース設置面の壁仕上げ、下地材等
  • 上記壁に接する床・天井の仕上げ、下地材等
  • 柱の傾斜により影響を受け傷んだ上階床の仕上げ、下地材等

<水平ブレースの場合>
  • ブレース設置面の床仕上げ、下地材等
  • ブレース設置面の天井仕上げ、下地材等
  • 上記床、天井に接する壁の仕上げ、下地材等
水平ブレースは床面や屋根面に設置する。
3.ブレースの取り外し
変形しているブレースを取り外す。
4.部材の実測と接合部の確認
ブレースのガセットプレート、高力ボルト取合い用孔の位置を確認する。
ブレースに高力ボルト用の孔あけを行う。
孔あけは鉄骨製作工場で行うが、現場加工する場合もある。
5.ブレースの取り付け
ガセットプレートの高力ボルト接合面の塗装、じんあい、油等を除去する。
取替えるブレースを仮ボルトで取り付ける。
6.高力ボルトの締付けとさび止め塗装
高力ボルトは、ボルトにマーキングを行った後に、本締めする。
高力ボルト締付け後の検査を行う。
高力ボルトや周辺の塗装(防せい処理)等を行う。
7.下地材・仕上材の復旧
以下の部分を復旧する。
  • 外壁下地材、仕上材、開口部
  • 床下地材、仕上材(フローリング等)
  • 天井下地材、仕上材
  • 内壁ボード、仕上材
8.最終確認
工事全体の仕上がりを確認する。
足場等を撤去のうえ、片付け・清掃を行う。
備考
    • 耐火被覆がある場合には、その撤去、復旧工事が発生する。
    • 丸鋼のブレースの場合はターンバックルの締め直しにより、解決することもある。
    • 外壁の撤去・修復は、工事中および修復後の雨漏りに注意すること。
    • 本工法により、不具合の進行を抑えられても、壁の傾斜等の不具合そのものが解消される訳ではないことに注意する。
    • ブレースの撤去は工事期間中に、全住民が一時的に退去する必要も考えられる。
(※1)ガセットプレートの溶接に問題がある場合は、溶接部の補修の必要も考えられる。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和4年版[7章4節](国土交通省大臣官房官庁営繕部) (一社)公共建築協会 (一社)公共建築協会
2 建築改修工事監理指針 令和4年版(下巻)[8章13~15節,17~18節](国土交通省大臣官房官庁営繕部) (一財)建築保全センター (一財)建築保全センター