補修方法編

外壁のひび割れ・欠損 躯体改修工法 G-2-305
RC造
工事概要

コンクリートの中性化、塩害等による鉄筋の腐食を原因としたコンクリートのひび割れ、欠損、又は構造耐力の低下を防止するため、鉄筋腐食補修、中性化抑制、塩害抑制、ひび割れ補修等を組み合わせ、コンクリート躯体の劣化を回復又は抑制する工法である。


補修材料の構成(引用:参考文献1)
対応する不具合と原因 不具合
  • 外壁のひび割れ・欠損(G-2)
原因
  • 柱・大梁・小梁・壁の配筋方法の不良
  • コンクリートの打込み・締固めの不良、養生の不良
  • 工事中の一時的な過荷重の積載
  • ひび割れ誘発目地の入れ方の不良
適用条件
  • 当補修工法の採用により、コンクリートの中性化、塩害等を抑制できることが専門家により確認された場合に適用する。
工事手順の例
1.事前調査
現場調査により適用条件を満たしていることを確認する。
劣化原因、劣化状況を調査、検討し工法を決定して、施工計画を立てる。
2.足場の設置
必要に応じて足場を設置し、粉塵や吹付け材が飛ばないように防塵シートを張る。
3.仕上材等の撤去
仕上材等(外装仕上材、内装下地・仕上材)を撤去し、コンクリート表面を露出させる。
4.補修箇所の前処理(参考:参考文献1)
脆弱部を取り除く。(参考:参考文献1)
  • 脆弱化しているコンクリート面をワイヤーブラシでケレンする。
0.5㎜以上のひび割れ部をUカットする。
浮き部分をはつり落とす。
  • 鉄筋が錆びている箇所は全てはつる。(参考:参考文献1)
鉄筋の錆をワイヤーブラシ等で落とす。(参考:参考文献1)
補修箇所面をエアーブラシ、高圧水等で清掃、洗浄する。
5.防錆処理、欠損部面処理(参考:参考文献1)
コンクリート欠損面に各種抑制材を塗布する。(参考:参考文献1)

06_RC補-03_G-2-305_5_図_2023
6.断面修復(参考:参考文献1)
ポリマーセメントモルタルを欠損部に充填する。(参考:参考文献1)
  • 欠損部分の底まで強く押し付けるように塗り込む。欠損が深い場合には、数回にわたって塗り込む。
ポリマーセメントモルタルの表面を金ごて等で押さえながら平滑に仕上げる。
防錆ペーストを全面に上塗りする。
  • 水、炭酸ガスの浸入を防ぎ、以後の中性化防止と鉄筋の腐食効果を高める。
7.仕上材等の施工
撤去した仕上材等の施工を行う。
8.最終確認
工事全体の仕上がりを確認する。
防塵シートを取外し、足場を撤去の上、片付け・清掃を行う。
備考
  • 欠損部の断面修復に関しては、建基法告示平13国交告1372号「建築基準法施行令第79条第1項の規定を適用しない鉄筋コンクリート造の部材及び同令第79条の3第1項の規定を適用しない鉄骨鉄筋コンクリート造の部材の構造方法を定める件」及び建基法告示平12建告1399号「耐火構造の構造方法を定める件」を参照のこと。
<コンクリートの中性化・塩害などに対する一般的躯体改修工法>
  • 鉄筋の腐食部分の錆を除去後、コンクリートに特殊なアルカリ付与材を含浸させることにより、以後の中性化防止と鉄筋の腐食抑制する上記工法が一般的である。
  • アルカリ骨材反応を原因とする不具合については、亜硝酸リチウム系の塗布含浸材を用いる工法(建築研究報告№124(建築研究所))もあるが、専門家による検討が必要である。
<特殊工法としての躯体改修工法>
  • 電気化学的補修工法として、電気防食、脱塩工法、再アルカリ化工法がある。(参考:参考文献1)原理はいずれも同様で、鉄筋コンクリート造建物に電流を流し、負荷電流によって鉄筋の腐食の抑制を図ろうとするものである。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 鉄筋コンクリート造建築物の耐久性調査・診断および
補修指針(案)・同解説[p104~112,116~120,163]
(社)日本建築学会 (社)日本建築学会