補修方法編

設備からの漏水 大便器と排水配管接続部の取付け直し W-2-005
木軸・木枠・RC造・S造
工事概要

便器を取り外し、排水管接続部分の部品交換及び補修を行い、便器を取付け直す。


不具合例(引用:参考文献1一部加筆)
対応する不具合と原因 不具合
  • 設備からの漏水(W-2)
原因
  • 配管等の接続及び支持・固定方法等の不良
  • 管材等の種類、規格の不適
  • ガスケットの取り付け不良又は劣化
  • 管材等の製品不良
  • 配管の径の不良
  • 床下地の強度不足
  • 耐久性のない取付金具(固定ボルト)の使用
適用条件
  • 床下排水式の便器であること。
  • 便器直下のベンド管の曲がりに無理のない寸法がとれるスペースがあること。
  • 排水管の種類がVP管であること。
工事手順の例
1.事前調査
当事者からのヒアリングや現場の原因調査により、上記の適用条件を満たしていることを確認する。
2.周辺内装仕上材等の撤去
工事範囲の床の仕上材及び下地材を撤去する。
便器や周辺機器設備も一旦外す。
3.床の下地補強
  • 便器の質量に十分耐えられるように必要に応じて下地補強をする。
4.配管の調整
ベンド管以降の管勾配や固定方法に問題がないことを確認する。問題があれば、この時点で補修する。
排水管を床仕上げより概ね15~20mmの高さで切断する。(切断面は平滑に仕上げる。)
便器排水口の心と器具排水口の心がずれないように、排水管の立ち上がり位置を確認し、調整して施工する。(心ずれにより接続時に無理が生じやすいため。)
5.床仕上げ施工
床仕上材を施工する。
立ち上がり管と床仕上材のまわりをシーリングする。(万が一漏れた場合、床上で漏水がないか確認できる。)
6-1.便器の取付(フランジ式の場合)
塩ビ排水管の立ち上げは床仕上面と同一にする。
フランジ差込外周部に塩ビ用接着剤を塗布し、塩ビ排水管にいっぱいまで押込む。
  • その際、必ずフランジの突起部を便器の中心線にあわせる。
  • 一度接着すると手直しが効かないので注意する。
耐食性木ねじを用いて、床フランジを床版及び根太に水平に固定する。
フランジにTボルトを挿入して便器を仮据えし、便器に取付用木ねじの穴がある場合は木ねじの位置をあたり、下穴の処置をしるす。
  • TボルトはTボルト取付け心(矢印)に合わせる。
フランシの溝にパッキンをセットする。
  • このときパッキンの向きに注意する。
便器排水口外周のごみや水分を取除き、パッキンのセパレート紙をはがしてはりつけ、便器を所定の位置に据え、ナットを締付けて固定する。
  • ナットを強く締めすぎて、便器を割らないようご注意する。
据付完了後、試験的に使用を繰り返してガタツキがないかを確認する。
  • メーカー標準施工法を遵守し、メーカー純正部品を使用する。

03_木補-軸08_W-2-005_5_6-1_7図上.jpg【床排水便器】(参考文献2)

03_木補-軸08_W-2-005_5_6-1_7図中.jpg03_木補-軸08_W-2-005_5_6-1_7図下.jpg【大便器の取付け状態】(参考文献2)
6-2.便器の取付け(排水ソケット式の場合)
塩ビ排水管の立ち上げは床仕上面と同一にする。
排水ソケットとの差込外周部に塩ビ用接着剤を塗布し、塩ビ排水管にいっぱいまで押込む。
  • その際、必ずフランジの突起部を便器の中心線にあわせる。
  • 一度接着すると手直しが効かないので注意する。

(参考文献2)
排水ソケットに六角ボルトを立て、とめ金具を通し、耐食性木ねじで床版及び根太に水平に固定する。

(参考文献2)
排水ソケットに型紙をあて、所定の位置に固定片の固定用の位置をけがく。

(参考文献2)
型紙を外し、固定片を耐食性木ねじで床に固定する。
便器を仮置きし、排水ソケット部のゴムジョイントを浮き上がりがないように正確に押さえ込む。

排水ソケットの例(chord作成)
便器排水口周辺のごみや水分を取り除き、排水ソケットに差込み、便器後方部をナットで締め付けて固定する。
次に、皿目ねじを便器正面の取り付け孔から固定片にねじ込み便器を固定後、化粧キャップを取り付ける。
  • ナットや木ねじを強く締めすぎると便器が割れるので注意する。

便器の取付け例(chord作成)
据付完了後、試験的に使用を繰り返してガタツキがないかを確認する。
  • メーカー標準施工法を遵守し、メーカー純正部品を使用する。
6-3.便器の取付け(床上排水式の場合)
便器中心線をけがく。
下図を参照に、排水の接続が所定の位置になるように便器を仮置きし、便器取付け木ねじの位置をけがく。
  • この時、便器中心線と便器の中心がほぼ一致するように注意する。

木ねじの位置をけがく方法の例(chord作成)
便器を外し、取付け木ねじの位置を基準に便器中心線上に、固定片の位置をけがく。
  • 床面がタイル・コンクリートの場合、固定穴4ヵ所に下穴をあけるなどの前処理をする。
固定片を木ねじで床に固定する。
便器排水口に接続パッキンを取付けてください。
  • 取付け方向に注意する。
  • 接続パッキンまたは排水管に石けん水を塗って差し込む。
便器を排水管に差し込み、木ねじで床に本固定する。
  • 木ねじを強く締めすぎて便器を割らないように注意する。
便器固定用皿木ねじを正面の取付け穴から固定片にねじ込み便器を固定して、最後に化粧キャップを取付ける。

壁排水方式の接続手順(引用:参考文献3)
据付完了後、試験的に使用を繰り返してガタツキがないかを確認する。
  • メーカー標準施工法を遵守し、メーカー純正部品を使用する。
7.片付け・清掃
8.排水試験
取り付け後、排水を繰り返し、床上に水漏れがないことを確認する。
備考
  • 漏水による汚れ・劣化の影響範囲の補修が別途必要となる場合がある。
  • 便器と排水管接続部の水漏れの原因として、排水床フランジと取付ける床との間に隙間が生じたり、床仕上材が均等でない場合や、VP管に接続する排水管の立上がり部分の寸法不足等が想定される。
  • 床上排水器具の排水管が逆勾配になると、器具の洗浄機能が低下したり、汚水が器具のトラップ内に逆流したりするので、排水管は1/50以上の勾配を確保する。
  • パッキンの取付け方向を間違いたり、ゴムジョイントが浮き上がったまま便器を押さえ込むと漏水の危険がある。

【改修に必要な機材】

養生資材(シート・ウエスなど)
新規のパッキン、ゴムジョイント等
器具取付け用工具類
内装(床・壁)工事用工具類及び復旧用資材

【改修に必要な専門技術者】

給排水衛生設備専門技術者
給排水衛生配管施工専門技能者
(特に、器具付け専門技能者に依頼すると良い)
内装工事専門業者

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 水にまつわるトラブルの事例・解決策
<設備編>[p78,88,113]
「設備漏水」編集委員会 (株)学芸出版社
2 (製造業者の設計施工資料集による)
3 マンションリフォーム専有部分施工マニュアル(2017年)[p114図7] (一社)マンションリフォーム推進協議会 (一社)マンションリフォーム推進協議会