補修方法編

界壁に係る遮音不良
(界壁からの透過音)
断熱材の折り返し部分にせっこうボード直張り工法を
採用したRC造の界壁の補修
SO-3-303
RC造
工事概要

界壁の空気音遮断性能の向上を目的として、断熱材の折り返し部分にせっこうボード直張り工法を採用した界壁の両側の既存仕上材を撤去し、新規に躯体とは絶縁した乾式壁を設置する。


界壁の構成例(chord作成)
補修を行った部分を赤色で示す。
対応する不具合と原因 不具合
  • 界壁に係る遮音不良(界壁からの透過音)(SO-3)
原因
  • 不適切な界壁への仕上材の施工方法
  • 界壁の仕上材等の性能不足 等
適用条件
  • 昭45建告第1827号第1項第一号の規定に適合していること。
  • 界壁の両側で施工ができること。
  • 本補修に伴う壁厚の増加が生活上、支障とならない場合に適用が可能であること。
  • 本補修は、原因が側路伝搬音でなく、界壁からの透過音である場合に適用可能である。
工事手順の例
透過損失等級(界壁)の評価基準に基づく仕様と同等程度の性能が確認された工法の例を示す。
1.事前調査
当事者へのヒアリングを行うと共に、現場での騒音の発生状況を確認し、原因調査を行う。
原則として隣接住戸間の空気音遮断性能の測定を行う。
推定される界壁の性能に対して測定結果が著しく下回っていないことや、界壁からの透過音以上の側路伝搬音がないことを確かめる。
不具合の状況から交換する必要のある範囲を確認し、工事計画を立てる。
可能な範囲で天井裏の状況を確認する。
2.目標性能を満たした工法及び製品の選定
事前調査で得られた結果に応じて、適用条件及び目標性能を満たす工法及び製品を選定する。(※1)
3.足場の設置
必要に応じて足場を設置し、養生を行う。
4.床、天井材の撤去
床下、天井裏に隠蔽された界壁の施工ができるよう、必要な範囲の床・天井仕上材、下地材等を撤去する。
撤去していない範囲の天井が落下しないよう、必要に応じて野縁等を補強する。
廻り縁、幅木を撤去する。
5.壁仕上材及び壁下地材等の撤去
壁仕上材(壁紙、仕上塗材等)及び壁下地ボードを撤去する。
界壁部分のせっこう系直張り用接着剤を撤去する。(※2)
②により、欠損した断熱材を補修する。
6.壁、床及び天井下地材の施工
軽量鉄骨下地等を施工する。スタッドは鉄筋コンクリート壁と縁を切り空間を設けて設置する。
スタッド間にグラスウールを充填する。
ボードを二重張りする。その際一重張り目と二重張り目の目地の位置を違えて張る。
撤去した床、天井の下地を復旧する。
7.壁、床及び天井仕上材の施工
仕上材(壁紙、仕上塗材等)を施工する。壁紙、仕上塗材等は、下地に直接張りとし、たるみや模様等のくい違いがないように裁ち合わせて張り付ける。
床、天井の廻り縁、幅木等の取り合い処理を施す。
8.最終確認
工事全体の仕上がりを確認する。
足場、養生等を撤去のうえ、片付け、清掃を行う。
原則として補修後の隣接住戸間の空気音遮断性能の測定を行い、界壁の発現性能の確認を行う。
備考
(※1)
目標性能については、日本住宅性能表示基準 第5別表1の8の8-3透過損失等級(界壁)の「(に)説明する事項」及び「(ほ)説明に用いる文字」欄が参考になり、当該基準に基づく仕様と同等程度の性能が確認される工法によるものとする。なお、性能の計測は公的な試験機関等で行われたものであることが望ましい。
(※2)
せっこうボード直張り工法を採用した外壁部分も、空気音遮断性能の低下要因となる可能性があるため、当該部分についても、せっこう系直張り用接着剤を撤去することが有効な場合がある。
  • 遮音補修は、許容できる騒音の程度には個人差があることに十分に注意して行う必要がある。少しでも音が聞こえている以上、うるさいと評価される可能性を持っている。
    したがって、遮音補修によってある一定の遮音性能を確保すれば万全ということではなく、ユーザーの要求や対象空間の音環境を十分調査する必要があるとともに、補修前に居住者等に十分に説明し、現状に対する騒音の低減の程度を理解してもらうことが重要である。(参考:参考文献2)

施工上の注意点
  • 既存のボードと同じ密度・厚さのものを増し張りしても遮音性能の向上効果が得られないため、密度・厚さが異なるものを使用することが有効である。
  • ボード裏面の空間(断熱材を含む空気層)は、ばねとして作用し、遮音性能が低下しないよう一定以上の寸法を確保する。
  • 新規に設置するボードと既存の鉄筋コンクリート躯体及び当該ボード同士にすき間が生じていると遮音性能が確保できないため以下の点に注意する。
    • 軽量鉄骨下地等の上に張るボードと既存鉄筋コンクリート躯体との取合い部分にはロックウール系充填材を施し、さらにその上に張るボードと既存鉄筋コンクリート躯体との取合い部分にはシーリング材を用いて確実にすき間をなくす。

      新設ボードと既存鉄筋コンクリート躯体との取合い部の例(chord作成)
      補修を行った部分を赤色で示す
    • ボード同士の取り合い部には目地補強テープ及びパテを用いて確実にすき間をなくす。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 建築物の遮音性能基準と設計指針(第二版)(日本建築学会編) [p87,88 2.2(1)d)] (一社)日本建築学会 技報堂出版(株)
2 部位別・図解 木造住宅の防音リフォームマニュアル [p140 7.3] (財)日本住宅リフォームセンター(現・(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター) (株)彰国社