補修方法編

床のたわみ スラブ下面への鋼板張付け F-2-302
RC造
工事概要
  • ひび割れ強度の改善によりたわみの進行を抑制するために、スラブ下面中央部に鋼板を張付け、スラブの靭性を高める工法である。スラブ上面へのかすがい筋埋め込み(RC造F-2-301)等と組み合わせても良い。
  • 床のたわみ修正が必要な場合は、セルフレベリング材による床の補修(RC造F-2-305)による。

06_RC補-02_F-2-302_2_図.jpg

工事概要図(引用:参考文献1一部加筆)
対応する不具合と原因 不具合
  • 床の傾斜(F-1)
  • 床のたわみ(F-2)
  • 床振動(V-1)
原因
  • スラブの配筋方法の不良(配筋位置のずれ等)
  • コンクリートの打込み・締固めの不良、養生の不良
  • 工事中の一時的な過荷重の積載
適用条件
  • 補修工事に伴う荷重の変動を考慮した長期荷重によって既存の全ての架構に生ずる力が長期許容応力度内に収まっており、原則として躯体コンクリートに不良箇所がない場合に適用が可能である。
  • 鋼板(平鋼)を床スラブ下面に密着させる必要があるため、スラブに段差がない場合に適用可能である。
  • 鋼板(平鋼)の搬入を可能とする空間的余裕があること。
工事手順の例
1.事前調査
現場調査により、適用条件を満たしていることを確認する。
たわみの状況、原因を確認し、施工計画をたて、工期を決定する。
2.内装仕上材等の撤去
当該住戸の(たわんだスラブの補修範囲の)下階住戸の壁、天井仕上材を撤去し、内装部分に対する養生を行う。
3.準備
器材・資材の搬入、仮設電源を準備する。
足場を設置する。
躯体の実測と墨出しをする。
4.スラブ下面の下地調整
モルタル等仕上げをはつり、サンダー等により凹凸をなくす。
スラブ下面に鋼板(平鋼)と床を密着させて張るため、不陸部のパテ処理を行う。
5.鋼板(平鋼)の張付け
鋼板(平鋼)を樹脂アンカーで天井スラブに固定し、エポキシ樹脂により床スラブ下面に接着する。
スラブより鋼板(平鋼)が下がってはがれない様に、パイプサポートで支持し養生する。

06_RC補-02_F-2-302_5_5_図上.jpg
06_RC補-02_F-2-302_5_5_図下.jpg

スラブ上面かすがい筋埋設・スラブ下面鋼板張付けの例
(引用:参考文献1一部加筆)
6.耐火被覆施工
鋼板(平鋼)、エポキシ樹脂の耐火性能を確保するために不燃材で鋼板(平鋼)の表面を覆う。
7.内装仕上材等の復旧
床のレベル調整を行い、撤去した内装仕上材(床、壁、天井)を復旧する。
8.最終確認
水準器を用いて床仕上げ面の水平を確認する。
足場等を撤去の上、片付けを行う。
備考
  • 本施工に伴い下階住戸の天井回りの電気設備、給排水設備の切断、再接続工事が発生する場合がある。
  • 補修工事に先立ち、管理組合(分譲共同住宅の場合)又は建物所有者(賃貸住宅の場合)を介して下階住戸居住者の承諾を得る必要があり、別途仮移転、住戸養生等が必要になる。
  • 鋼板(平鋼)が落下しないように措置を講ずる必要がある。
  • かすがい筋はさびが発生しないように配慮する。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 建築技術1994年12月号[p.96~98] 浅井浩一 (株)建築技術
2 2015年改訂版 震災建築物の被災度区分判定基準および復旧技術指針[鉄筋コンクリート造/鉄骨鉄筋コンクリート造編][pⅡ-119](国土交通省国土技術政策総合研究所,国立研究開発法人建築研究所) 国土交通省住宅局建築指導課 編集協力 (一財)日本建築防災協会
3 コンクリート診断技術’22 基礎編[p313~314] (公社)日本コンクリート工学会 (公社)日本コンクリート工学会