補修方法編

降雨による漏水 パラペットの打直し、防水層の再施工
(アスファルト防水・改質アスファルトシート防水)
W-1-302
RC造
工事概要

押えコンクリートによって押し出されたパラペットを撤去し、屋根スラブ及び梁等のひび割れを補修した上で、パラペットを打直す。


パラペット破損状況の例(引用:参考文献1)
対応する不具合と原因 不具合
  • 降雨による漏水(W-1)
原因
  • 防水層(主に押えコンクリート、伸縮目地)の品質不良・施工不良
  • 防水層端部の納まり不良
  • 防水層の押えコンクリートによる押出し
適用条件
  • パラペット立上がり部の全面撤去が可能な場合に適用できる工法である。
工事手順の例
1.事前調査
当事者からのヒアリングや現場での原因調査により、適用条件を満たしていることを確認する。
不具合の状況、原因を確認し、補修設計に基づいて施工計画をたてる。
補修する範囲を判断し、決定する。(本項では一部の補修事例を示す。)
2.足場の設置
  • 施工内容や規模により、仮設や足場の規模もかわるので注意すること。
3.破損部を含む施工箇所の確認
押えコンクリートは、補修箇所周辺で目地切りされる適当な範囲まで撤去する。(注1)
立上がり部は、できるだけ主筋を残し、手作業によるはつりで丁寧にコンクリートのみ撤去する。
4.防水層の不具合部分の撤去
防水層の不具合部分は、重ね張りできる健全な部分を残し、撤去する。(注1)
撤去後、コンクリートスラブ面を充分に乾燥させる。
5.コンクリートひび割れ面の補修
ひび割れは、Uカットシール材充填工法等により補修する。(参考:参考文献3)
6.立上がり部分の躯体施工
打継面を充分に荒らし、鉄筋補強の準備を行う。
あごは充分に出し、必ず水切り目地を設ける。
状況によって、補強増打ちをする。
  • コンクリート厚さは160~180㎜、鉄筋量は一般の壁部よりも30%程度増しのダブル配筋とする。
コンクリート打継面には、目地を設ける。施工面が大きい場合は、立上り部分にも適宜目地を設けることが望ましい。
7.防水層の施工
8.伸縮目地の位置決めと固定
9.押えコンクリートの施工
10.立上がり押え部分の施工
防水立上がり端部はシーリングを行う。
レンガ積みによる押えの裏側は、必ずモルタル等を充分に充填し空間をつくらない。末端部は必ず金物押えとする。
立上がり部の保護には、この他に乾式工法等がある。
(「図 乾式保護材を用いた立上り部保護の例」はW-1-304

06_RC補-08_W-1-302_5_10_図_2023
れんが押えによる立上り部の保護の例(引用:参考文献4)
11.伸縮目地材打ち
12.外壁仕上げ
13.打継ぎ目地シーリング打ち
  • 既存部分も合わせて施工する。
14.最終確認
降雨時に浸水がないことを確認する。
足場を撤去のうえ、片付け・清掃を行う。
  • 止水確認までは足場は残しておくことが望ましい。
備考
  • 補修時に躯体のひび割れ、防水層のふくれ、しわ、亀裂、外壁仕上材の浮き、割れなどが発見された場合は補修する。
(注1)
押えコンクリートのあるアスファルト防水及び改質アスファルトシート防水の漏水補修方法としては、押えコンクリート、防水層等を撤去し、補修した上で再施工する、本項で示す「撤去工法」が原則となる。
一方、「撤去工法」は、工事に伴う騒音、振動、粉塵、降雨時における漏水等が問題となる可能性があるため、工事の実施にあたっては、居住者に工事内容を十分に説明し、合意を得ることが重要である。状況によっては既設の防水層や押えコンクリートを撤去せずに、その上に新規の防水工法を行う「かぶせ工法」も含め、適切な防水補修方法を選定する必要がある。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 水にまつわるトラブルの事例・解決策<建築編>[p56] 「建築漏水」編集委員会 (株)学芸出版社
2 建築工事 瑕疵・クレーム防止技術マニュアル
改訂版[p55,61](絶版)
(社)建築業協会 建築施工部会・
瑕疵保証分科会
(社)建築業協会
3 建築技術1996年6月号[p127] 柿崎隆志 (株)建築技術
4 建築改修工事監理指針 令和4年版(上巻)[p211(図3.3.29)] (一財)建築保全センター (一財)建築保全センター