補修方法編

界床に係る遮音不良
(軽量床衝撃音)
軽量床衝撃音に対する遮音性能のある
乾式二重床への交換
SO-2-301
RC造
工事概要

界床の軽量床衝撃音遮断性能の向上を目的として、床下地材を交換し、床仕上材を新しく張り直す。


床組の構成例(chord作成)
対応する不具合と原因 不具合
  • 界床に係る遮音不良(椅子の移動音や物の落下音等の床衝撃音)(SO-2)
原因
  • 床下地材等の性能不足
適用条件
  • 床構造が日本住宅性能表示基準・評価方法基準の第5の8-2で規定する「均質単板スラブ等」又は「ボイドスラブ」であり、等価厚さが「均質単板スラブ等」は130㎜以上、「ボイドスラブ」は200㎜以上であること。
  • 交換する床仕上材・床下地材の対応高さ寸法の中に、既存のコンクリートスラブ面から床仕上面までの高さ寸法が含まれていること。
  • 本補修に伴う荷重の増加が構造計画上、支障とならない場合に適用が可能である。
工事手順の例
軽量床衝撃音対策等級の評価基準に基づく仕様(特別評価方法認定)による補修方法の例を示す。また、本補修の床仕上材はフローリングの場合とする。
1.事前調査
当事者へのヒアリングを行うと共に、現場での騒音の発生状況の確認を行い、現場での原因調査を行う。
原則として界床の軽量床衝撃音遮断性能の騒音測定を行い、実態を把握する。
  • 測定方法は、JIS A 1418-1によるものとする。
2.目標性能を満たした製品の選定
事前調査で得られた結果に応じて、適用条件及び目標性能を満たす乾式二重床を選定する。(※1)
3.床下地材・仕上材の撤去
フローリング・幅木・壁ボードの施工状態を確認し、以下の順序で撤去する。
  • 幅木
  • フローリング等の床仕上材
  • 床下地材
4.床下地材の施工 床下地材の設置方法は各製造所の仕様による。以下に基本的な手順を示す。
コンクリートスラブ表面の汚れ、付着物等を除去する。
際根太を設置する。際根太と既存壁との取り合い部には緩衝材を設ける。
防振ゴム付き支持脚を割付計画に沿って設置する。
ベースパネルを敷き込む。ベースパネル同士は適宜隙間を確保する。
ベースパネルを1枚敷きこむごとに床の水平レベルの調整を行い、全てのベースパネル敷きこみ後、再度レベル調整を行う。
床全体を歩行し、支持脚の浮きの有無を確認・調整する。
制振マットを敷き並べる。
5.床仕上材の施工
床仕上材は、その長辺方向がベースパネルの長辺方向と直交するように配置し、スクリュー釘またはフローリング用ステープルにより製造所指定の間隔でベースパネルに固定する。
6.幅木の設置
幅木を取り付ける。
7.最終確認
工事全体の仕上がりを確認する。
養生等を撤去の上、片付け、清掃を行う。
原則として補修後の界床の軽量床衝撃音遮断性能の測定を行い、界床の発現性能の確認を行う。
備考
(※1)
目標性能については、日本住宅性能表示基準 第5別表1の8の8-2軽量床衝撃音対策の「(に)説明する事項」及び「(ほ)説明に用いる文字」欄が参考になる。
また、乾式二重床の仕様の選定にあたっては、日本住宅性能表示基準・評価方法基準 第5の8の8-2軽量床衝撃音対策(2)ロbの表、(一社)住宅性能評価・表示協会が提供している「認定・認証工事情報検索システム」及び「床材の床衝撃音低減性能の表現方法に関する検討委員会」によって提示された「床材の床衝撃音低減性能の等級表記指針」が参考になる。
  • 遮音補修は、許容できる騒音の程度には個人差があることに十分に注意する必要がある。少しでも音が聞こえている以上、うるさいと評価される可能性を持っている。
    したがって、遮音補修によってある一定の遮音性能を確保すれば万全ということではなく、ユーザーの要求や使用される環境等を十分調査する必要があるとともに、補修前に居住者等に十分に説明し、現状よりは騒音が低減することを理解してもらうことが重要である。(参考:参考文献2)

施工上の注意点
界床の遮音性能を確保するためには、床の振動が壁等を伝って下階に伝搬しないよう、以下の点に注意して施工する。
  • ベースパネル小口面及び制振マットと、壁面、配管立上がり部、敷居、框等とが接触しないよう適宜すき間を設ける。(引用:参考文献1)
  • 床仕上材と敷居等とが接触しないよう適宜すき間を設ける。ただし、当該すき間を見切り材やシーリング材等、軟質系の部材で覆うことは構わない。
  • 床仕上材と幅木とが接触しないよう、適宜すき間を確保する。

参考文献

書名[該当箇所](監修) 編著者 発行所
1 公共住宅建設工事共通仕様書 令和元年度版[p255 19.11.2施工(4)] 公共住宅事業者等連絡協議会 (株)創樹社
2 部位別・図解 木造住宅の防音リフォームマニュアル [p140 7.3] (財)日本住宅リフォームセンター(現・(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター) (株)彰国社